日本腹部救急医学会雑誌
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消化管悪性腫瘍術後合併症に対するインフォームド・コンセント
紛争予防の観点から
古川 俊治
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2003 年 23 巻 5 号 p. 765-771

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抄録

患者の治療上の自己決定権は「人格権」 (憲法13条) の一内容として基本的人権として尊重される. この趣旨からは, 手術と選択可能な他の保存的治療法の有効性と危険性について, 奏効率や合併症発症率の具体的数字 (何%程度など) をあげて説明することが重要である. また, 臓器によっては特に進行悪性腫瘍の手術成績は不十分であり, その状況を具体的に説明することも必要である. 患者の自己決定権を絶対視する必要はなく, 医師が自ら選択する合理的治療方法を患者に勧めることは医師の義務でもあるが, その実施には患者の同意が必要である. ただし, 今日, 特に, 侵襲的方法を避けて保存的療法を選択する患者の権利が強調されてきており, たとえ奏効率の低い保存的療法でも, それを患者が理解したうえで敢えて希望しており, 合理的適応の余地がないとはいえない場合, 医師自身が手術が適切と考えても, 患者が保存的療法を受け得るよう配慮する義務がある.

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