2003 年 23 巻 5 号 p. 789-793
症例は47歳女性. 1999年5月29日より下腹部痛を認め当科受診. US・CTで左卵巣嚢腫と小腸の拡張を認めた. イレウスと診断し, イレウス管を挿入した. 小腸造影では通過障害はなく, 腸管運動は微弱であった. 卵巣嚢腫破裂によるイレウスを疑い開腹手術を施行した. 左卵巣嚢腫の破裂と回腸の一部に癒着と硬結を認めた. 術中に心室性頻拍から心停止となった. 蘇生術にて, 呼名反応を得るまで蘇生した. 嚢腫摘出術および腸管切除術を行った. 心エコー図では心臓の器質的異常は認めず, 下痢により生じた低K血症により不整脈を起こしたと考えられた. 術後経過は問題なく, 第19病日に退院した. 病理組織検査では回腸固有筋層に子宮内膜が島状に散在していた. 小腸子宮内膜症はまれで, 術前診断は困難といえる. 原因不明のイレウスの診断に際して本疾患を念頭に置く必要があると思われた.