日本腹部救急医学会雑誌
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血栓摘除術のみで治癒した急性上腸間膜動脈塞栓症の1例
飛永 覚赤須 晃治佐島 秀一松尾 英生吉田 正明石 英俊
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2003 年 23 巻 5 号 p. 795-798

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抄録

症例は78歳, 男性. 急性腹症にて当院へ搬入された. 理学的所見では, 自発痛は強いが腹膜刺激症状や筋性防御は認めず, 腸管蠕動音は減弱していた. 腹部単純X線写真では, 異常ガス像を認めなかった. 心電図検査にて心房細動を認めた. 入院後保存的治療を施行したが改善せず, 腹部CTおよび血管造影検査で, 中結腸動脈分枝部以下末梢の急性上腸間膜動脈塞栓症と診断され, 発症後34.5時間で緊急手術となった. 術中所見では, 腸管壊死は認められず, 中結腸動脈分枝部末梢に血栓を認めこれを摘出し手術を終了した. 発症後34.5時間経過し血行再建術のみで救命できた症例は本邦報告例ではまれであるが, 腸管壊死に至るまでの発生機転には, 閉塞部位や範囲および腸間膜血行動態の状況などが左右するものと考えられた.

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