日本腹部救急医学会雑誌
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術後肺硬塞を疑わせる病態を併発して急死した非穿孔壊死型虚血性大腸炎の1例
生方 英幸本橋 行中地 健春日 照彦片野 素信佐藤 茂範田渕 崇文
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2003 年 23 巻 5 号 p. 799-803

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抄録

術後不幸な転帰をとった壊死型虚血性大腸炎の1例を経験した. 症例は82歳, 男性. 主訴は下腹部痛. 腹部単純X線検査, 腹部CT検査では腹腔内遊離ガスはなく, 腹水も少量であり, 術前に確定診断はできなかったが, 汎発性腹膜炎を疑い緊急手術を施行した. 開腹すると, S状結腸が18cmにわたり壊死に陥っており腸管壁が穿孔寸前まで菲薄化していた. 支配動脈の血行は良好であり下腸間膜動脈血栓症は否定的であった. 壊死部位を切除し下行結腸にて人工肛門を造設した. 術後は経口摂取可能となったが突然肺硬塞を疑わせる病態を合併して急死した. 虚血性大腸炎は, 一過性型, 狭窄型は保存的に改善し予後良好であるが, 壊死型は進行性で腹膜炎をきたし外科的治療を要し予後不良である. 特に非穿孔例の術前診断は困難であるが, SIRSの所見と腹部理学的所見が緊急手術の重要な診断根拠となる. また術後は肺硬塞の合併に十分注意する必要がある.

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