2003 年 23 巻 5 号 p. 805-809
胃癌穿孔は比較的まれな病態であり, その治療成績は不良である. 過去10年間の当科における胃癌穿孔例は4例で, 上部消化管穿孔41例中9.8%, さらに胃穿孔17例中23.5%を占め高率であり, 胃穿孔と確認されたときは悪性疾患を念頭に置く必要があると考えられた. 主たる占拠部位は, L領域2例, M領域1例, U領域1例で, 穿孔部位は前壁または前壁小湾だった. 4例すべてに幽門側胃切除を施行した. 肉眼型は3型が3例, 2型が1例, 組織型は低分化型腺癌が2例, 中分化型腺癌が1例, 高分化型腺癌が1例であった. 自験例ではいずれも術前診断できなかったことから肉眼的に良性潰瘍と診断しても必ず術中病理検査が必要であると考えられた. 穿孔例非治癒切除は穿孔治癒切除に対し, 累積5年生存率で大きく劣ると報告されており, 治癒切除が可能な症例は全身状態の許す限り根治術を施行すべきであると考られた.