日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
特発性腸間膜血腫の1手術例
成田 和広塚田 一義清水 喜徳後藤 学高村 光一平田 滋
著者情報
キーワード: 特発性腸間膜血腫
ジャーナル フリー

2004 年 24 巻 4 号 p. 819-823

詳細
抄録
特発性腸間膜血腫の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する. 症例は55歳, 男性. 昼過ぎ起床時より腹部全体の痛みが出現し, 翌早朝救急外来を受診した. 来院時, 腹部全体に強い痛みがあり, 板状硬で筋性防御もみられた. CT検査にて腹腔内液体貯留と後腹膜から腸間膜に異常陰影を認め, 精査および加療目的にて入院となった. 入院後貧血が進行し, エコー下穿刺にて血性腹水を認めたため, 腹腔内出血の診断で緊急手術を施行した. 腹腔内に多量の血性腹水を認め, 十二指腸下行部から水平部, 上腸間膜動脈周囲および小腸間膜に血腫を認めた. 血腫を開放し出血源を検索するも不明であり, 出血がないことを確認し手術を終了した. 本症例では, 既往に外傷はなく血腫の原因は不明であり, 血管撮影検査や手術にても出血源が確定できなかった. 特発性腸間膜血腫はまれな疾患であるが, 原因不明の腹腔内出血を認めた場合, 本疾患も念頭に入れる必要がある.
著者関連情報
© 日本腹部救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top