日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
術前診断が困難であった外傷性腹腔内膀胱破裂の1例
佐々木 規之高山 宗之中西 正樹浅野 元和四方 裕夫坂本 滋松原 純一
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 24 巻 4 号 p. 815-818

詳細
抄録
症例は50歳男性, 2トントラックを運転中, 軽自動車と接触後に電柱へ激突した. 運転席のシートとハンドルの間に挟まれた状態で救助され, 当院救急外来に搬送された. 腹部造影CTを施行したところ, 肝表面に低吸収域を認めた. 膀胱からの造影剤の漏出は認められなかった. また, GOT, GPTの有意な上昇は認められなかったものの, この時点で膀胱破裂は念頭になく, 肝挫傷を疑い入院とした. 入院後数時間して, 尿意はあるものの排尿困難をきたしたため, フォーリーカテーテルを留置した. 排尿はあったが凝血塊を伴う血尿を認めた. 翌日に腹部CTを再検したところ, freeairを認め, 消化管穿孔を疑い, 同日緊急開腹術を行った. 術中, 穿孔を思わせる消化管の損傷部位は同定できなかったが, 膀胱頂部に約7cmにも及ぶ膀胱壁の裂創が認められた. 破裂部の縫縮術を施行, 術後は経過良好で, 32日目に退院となった. 腹部の鈍的外傷では腹腔内膀胱破裂も念頭に置き, 診断を進めることが肝要である. また, 血清BUN, Crレベルの上昇は, 膀胱破裂の診断に有用であると考えられた.
著者関連情報
© 日本腹部救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top