2006 年 26 巻 5 号 p. 633-636
【背景】外科手術のテレメンタリングシステムとは指導医の指導のもと, 遠隔地にいる研修医などの経験の浅い医師による手術を補助するシステムである. これは救急医療や過疎地の医療分野での可能性が期待されているが, 実現・運用には安全性や信頼性の評価などでいまだ十分な裏付けがあるとはいえない状況である. 今回, われわれはこのシステムを構築して実際に運用し, その有用性を検討した. 【方法】当施設 (東北大学病院) に研修医, 関連医療施設に指導医を配置して, それぞれの施設にビデオカメラ・マイク・通信用コンピュータを設置し, 施設間を光ファイバー網でつないだ. 信号欠損などの有無を含め, 情報伝達の質も検討した. この状況下で腹腔鏡下胆嚢摘出術と腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した. 【結果】手術は術中合併症がなく終了した. 信号伝達系の大きなトラブルは発生しなかった. 【考察・結語】リアルタイムの指導情報は極めて有効であり, 本システムの有用性を示すことができた. 本システムを応用・発展することにより臨床医の教育や救急医療を含めた実際の患者の治療に貢献できると思われるが, 安全性の検証などについて今後, 実用化のためにはさらに多くの情報の積み重ねが必要である.