日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
感染経路不明のアメーバ性肝膿瘍の2例
斎藤 由理斉藤 孝村越 智鈴木 克彦
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 26 巻 5 号 p. 683-686

詳細
抄録

膿瘍ドレナージとメトロニダゾール投与で治癒したアメーバ性肝膿瘍の2例を経験した. 2例とも遷延する発熱を主訴に受診し腹部CT検査上で肝膿瘍を指摘された. 1例目は間接蛍光抗体法による抗アメーバ抗体価の上昇で, 2例目は膿中の栄養型アメー. の検出により診断された. 2例とも先行する腸管症状がなく, 既往歴, 生活歴からも感染経路は不明で, compromised hostではなかった. 赤痢アメーバの90%は不顕性感染のcyst carrierといわれている. 今後, 海外渡航歴や先行する腸管症状, 明らかなアメーバ赤痢感染者との接触などの既往のない患者は増加していくと考えられる. 肝膿瘍の診断時には赤痢アメーバの感染に関連する既往歴, 生活歴, 現病歴がない場合でもアメーバ性肝膿瘍を鑑別する必要があると考えられる.

著者関連情報
© 日本腹部救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top