抄録
認知面に比べて、情意面の変容の成果は多様である。情意の領域における学習成果を評価するためには、まず評価の対象となる行動を特定する必要がある。この研究は、学習者の授業感想文の分析をとおして、その評価対象を具体的に記述することを目的としている。情意面の変容は認知面の変容と表裏一体的に起きる。その時生起する情意面の変容の種類ならびに強度は、認知面の変容の質に関係する。したがって、認知面の変容の質に注目しその変容の質的レベルと一体的に捉らえることが望ましい。認知面の変容には、付加拡大、修正、明確化、深化、再構成化の5つの次元があり、また領域的には学習事項そのものについての認知、学習とは何かなど価値付けに関わる認知、学習方略についての認知の3種の変容がある。実際の授業における反応を子細に分析することをとおして、情意領域の多様な学習成果を認知面の変容との関係において捉らえる枠組みを提起した。