2015 年 22 巻 1 号 p. 1-12
近年学校図書館は本好きな児童が集まる場から「学びの場」へと,学習環境整備が進められてきた。児童が学校図書館を活用するためのスキル(本論文では「情報活用スキル」と言う)は,調べ学習や探究的な学習を通して習得される。そこで,このような学習を行う場である学校図書館の学習環境の改善は,児童の「情報活用スキル」の習得度の向上に効果があることについて検証を試みた。本調査における改善の特長は,利用者の活用を意識した展示の仕方にある。改善の要件として,「授業の成果を保存・展示できる」「常に新しい情報を入手できる」ことを満たすために,授業の成果物や新しい情報(新聞)を利用者が日常的に手に取れるような工夫を行った。その結果,「情報活用スキル」の平均値は向上し,利用者の活用を意識した展示の工夫は「情報活用スキル」の習得度の向上に概ね有効であることが示された。その一方で,「情報活用スキル」の習得には,授業だけでなく日常での情報収集の手段が大きく寄与することも見出された。