抄録
本研究では,大学の教科教育法の授業において,模擬授業を実際に体験することが,ICT活用指導力にどのように関係するのかを明らかにすることを目的とした。ICT活用指導力については,TPACK(Technological Pedagogical Content Knowledge)という枠組みから,その分析を行った。教員養成学部において,小学校教員免許取得のために実施している家庭科教育法2クラス93名分のデータを研究対象とした。この93名について,教師役として模擬授業を行った群(模擬授業経験あり群:33名)と,その模擬授業に児童役として参加した群(模擬授業経験なし群:60名)を比較した。その結果,TPACKの視点の変化としては,模擬授業経験あり群のほうが,TPK(Technological Pedagogical Knowledge)の視点からより効力感は高まること,ICTの技術的な視点のみにとどまらず,教育技術的な視点から改善も見られるということがわかった。またその視点は,模擬授業の実施と指導案改善を一度ではなく二度繰り返したことにより変化が見られたことも明らかとなった。