抄録
本研究は,マンガの読みに固有の読解力や,文章の読みと共通する読解力の内実を明らかにするために,マンガの読解力と文章の読解力の関係性について検討することを目的とした。マンガの読解力および文章の読解力の測定にあたっては,マンガと文章それぞれについて,van Dijk & Kintsch(1983)の文章理解モデルにおける3つのレベルの表象(表層レベル・テキストベース・状況モデル)を反映する設問からなる理解度テストを実施し,得点間の媒介分析ならびに相関分析を行った。その結果,マンガと文章の表層レベルに関する問題の得点はテキストベースに関する問題の得点を媒介して,状況モデルに関する問題の得点に影響していることが示され,マンガの読解においてもvan Dijk & Kintsch(1983)の文章理解モデルが適用できることが示唆された。また,マンガと文章の読解力の関連性に関して,表層レベルの理解では異なる認知能力が寄与している一方,テキストベースや状況モデルの読解では共通する認知能力が寄与していることが示唆された。本研究で得られた知見を踏まえ,マンガの読解と文章の読解の共通点や相違点について議論した。