抄録
本研究では,協同学習を取り入れた同期遠隔授業を行うことで,生徒の協同作業に対する認識が変化するか検討することを目的とする。COVID-19による一斉休校の2020年5月,中学1年生191名を対象とする数学の授業において,まず,同期遠隔授業に慣れるため講義を中心とする同期遠隔授業を3回,その後,講義に協同学習の基本技法を取り入れた同期遠隔授業を3回実施した。結果,講義に協同学習の基本技法を取り入れた同期遠隔授業の期間を通して,個人志向因子の低下と有意傾向ではあるが互恵懸念因子の低下という点で,協同作業に対する認識が肯定的に変化した。さらに,同期遠隔授業に慣れるために行った講義を中心とする同期遠隔授業の期間を通しても,個人志向因子の低下という点で,生徒の協同作業に対する認識が肯定的に変化した。以上より,教室での対面授業が行えない状況下においては,講義に協同学習の基本技法を取り入れた同期遠隔授業はもとより,講義を中心とする同期遠隔授業においても生徒の協同作業に対する認識が肯定的に変化する可能性が示唆された。