抄録
本研究の目的は,日本語を主とした情報環境により,異文化に対する認識の偏りが作られていることへの気づきを与える手法を提案することである。そこで,小中学生を対象に,異文化の当事者(メンター)とともに多言語横断検索によって情報を見比べ,ファクトチェックを行いながら「食べ物」「観光」に関する写真を選び,それをキャッチコピーで表現する課題に取り組むワークショップをデザインし,実践する。本研究の到達目標は(1)参加者がインターネット上の情報について日本語に限った検索では得られる情報に偏りがあることに気づくこと (2)インターネット上の情報を異文化の知識理解に活用するために求められる要素をまとめることである。実践の結果,参加者の行動観察と印象マップ作成により(1)について多言語横断検索とファクトチェックによる情報の見比べによって,インターネット情報を異文化理解の文脈で活用することができ,参加者は異文化についての部分的・偏向的な認識に気づくことができた。(2)については(1)の結果を受け「情報を見比べる環境づくり」「誤った情報理解を防ぐ仕組み」「検索語を拡張させる工夫」が重要な要素であるとした。