抄録
高等学校の総合的な探究の時間は,「自己の在り方や生き方」を探究する能力の育成を目標とするが,生徒が「自己の在り方や生き方」を見出す方法については十分に議論されていない。本研究では,ジョン・デューイの探究教育哲学に基づき,アートを用いた手法が自己の探究に与える影響を検討することを目的とし,高校生が(1)中学生時代の自分と(2)高校生活における理想の姿をメタファーで表現する活動を実施した。分析の結果,メタファーを活用することで,(1)では「感情や体験の外在化」「自己イメージの再構築」「他者との関係における自己認識」「学びや成長の可視化」が,(2)では「理想の自己像」「知識や能力の獲得」「意識や行動の変容」「高校生活の充実」という側面が明らかとなった。また,2つのメタファーを同時に考察することで,生徒は過去・現在・未来の自己を結びつけ,自己の物語を生成していたことが示された。