日本教育メディア学会研究会論集
Online ISSN : 2435-0729
Print ISSN : 1344-8153
58 巻
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  • 劉 暢, 王 一, 中橋 雄
    2025 年58 巻 p. 1-5
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,学習者が提出した課題に他の学習者がコメントをつける活動を取り入れた授業における,学習効果や学習者の反応を明らかにしたものである。調査の結果,学習者は授業内容の理解度や学習意欲が向上したと感じていた。また,他者からのフィードバックによって視野が広がったと感じており,学びの質を高める学習活動であったといえる。その一方で,自由に意見を述べやすくするために匿名にしてほしいといった要望や,コメントをつける時間を増やしてほしいといった要望を確認することができた。またコメントが付く人と付かない人に差があることを気にする意見など,授業を改善する上で参考になる意見を得ることができた。
  • 角南 卓也, 永田 智子
    2025 年58 巻 p. 6-11
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,小学校5年生を対象に振り返り活動の実態調査を行い,課題を明らかにした上で,生成AIを活用した個別最適な振り返り支援システムの開発を目的とした。質問紙調査と振り返りの記述分析の結果,学習者は振り返りの重要性を認識しているものの,内容や書き方の困難さ,記述量のばらつきなどの課題が明らかになった。さらに,「学習内容を現在や過去の学習内容と関係付ける振り返り」と「学習内容を一般化する振り返り」が困難であることが確認された。これらの課題を解決するため,対話型生成AIを活用した振り返り支援システムを開発した。このシステムは,学習者の記述に基づいて具体的な個別の質問やフィードバックを生成し,振り返りの質を高めることを目的としている。 今後は,開発したシステムを実際に小学校5年生の振り返りで活用し,その効果を検証することで,振り返り活動の新たな可能性を探ることが期待される。
  • 髙田 昌裕, 竹内 俊彦
    2025 年58 巻 p. 12-15
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,学習者が映像編集技術を主体的に学ぶための教育ゲーム教材を開発し,授業実践を通じてその教育効果を検証するものである。本研究では特に映像トランジション技法(例:マッチカット,Lカットなど)を教えるゲーム教材作成に焦点を当てた。教材はA4用紙に両面印刷したものであり,学習者は3カットの映像を組み合わせ,指定されたトランジション効果を用いて短い映像のコンテ案を制作する。この教材を用いた授業では,学生がグループ内で各自,制作・発表し,相互評価と投票を通じて学びを深める。1月6日の講義形式の授業では基礎知識を教授し,1回目の小テストを行う。1月20日の授業ではゲームを用いた実践と事前・事後アンケート,2回目,3回目の小テストを行い,ゲームの学習効果を比較する計画である。実験結果は発表当日に示す。
  • 竹内 俊彦, 舘 秀典
    2025 年58 巻 p. 16-19
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,過去に開発したSNS上の情報信憑性を判断するゲーム教材を用いて,大学の「マルチメディア論」の授業で授業実践を行った。教材には新聞社サイトやSNSを模した記事カードが含まれており,学生が情報の真偽を議論しながら「ほぼ正確」「ミスリード」「不正確」「虚偽」のいずれかに判定するゲームである。ゲームの事前・事後にアンケート取り比較した。その結果,学生はSNSの真偽を適切に判定することの難しさを実感したことが確認できた。さらに「楽しく学べた」という評価が多く,ゲーム形式の学習が学習意欲を高めることが示された。その一方で,アンケートの分析結果や自由記述からは,ルール説明の不十分さや時間配分に関する課題が指摘された。また問題の量や難易度について改善の余地があると考えられる。
  • 韓国・米国・日本・英国を中心に
    小川 眞理絵
    2025 年58 巻 p. 20-24
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,ディープフェイク・ポルノの影響を受けている上位4国,韓国,米国,日本,英国の事例と対策を調査した。結果,著名人ではなくても被害に遭うことや作成者は身近な存在であることがわかった。対策としては,各国が法律の整備といった対策を進める中,日本はディープフェイク・ポルノを明確に規制する法律が存在せず,対策が他国と比べて遅れている現状があることが明らかとなった。生成AIを用いた教育実践や研究が数多く行われているが,今後は現実の課題に即した負の側面をもつ生成AIに関する実践研究を進めることが求められる。
  • 大学生を対象とする事例的調査
    村井 明日香, 宇治橋 祐之, 齋藤 玲, 堀田 龍也
    2025 年58 巻 p. 25-32
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    昨今の動画コミュニケーション時代において,動画を縦型で撮影することが当たり前となった。この縦型と,従来の横型の動画では,撮影範囲が異なることから,同一内容・意図であったとしても,伝達される印象や情報が異なりえる。本研究では,PR目的の動画(以下,PR動画)を題材に,1)同じ対象を撮影した縦型と横型の動画の印象および内容の理解度の違いを明らかにすること,2)PR効果が高いのは横型の動画か縦型の動画かを明らかにすること,の2点を目的とする。大学1年生に対して,授業の魅力を紹介する横型・縦型2本のPR動画の提示実験を実施した結果,本研究で提示したPR動画(授業の魅力紹介)のように,多数が集まって活動をする状況を撮影した動画においては,横型のほうが,動画で紹介した内容に興味を持ってもらいやすく,PR効果が高い可能性が示された。
  • 八木澤 史子, 安里 基子, 堀田 龍也
    2025 年58 巻 p. 33-40
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,子供たちが自律的に学びを進めるために必要な情報についての手がかりを得ることを目的として,自由進度学習に継続して取り組んでいる小学校で作成された学習指導案および学習計画を分析し,従来の学習指導案の項目の特徴と比較した。その結果,学習指導案および学習計画の特徴から,学習指導案には,学校全体で育成を目指す児童の姿や授業のあり方に関する内容が必要最小限記述されていること,学習計画には,学習指導案に記載されていた情報の一部が児童と共有するために記載されていること,学習指導案,学習計画に共通して,児童が個別に学習を進める際に,児童の興味関心,進捗,理解度等の個人差に対応できるような工夫がされていることが示唆された。
  • 前多 香織, 藤村 裕一
    2025 年58 巻 p. 41-50
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,小学校4年生の国語科・読むこと単元において,1人1台端末を活用した対話的な学びを促す活動設計とリアクション・トレーニングが児童と担任教師に与えた影響を調査した。調査を開始して1・2時間目の授業では,考えが広がり・深まったと感じた場面として教師の説明や個人思考が多く,受け身的な学びが確認された。そこで,対話を促す活動を設定し,リアクション・トレーニングを実施した結果,3時間目以降,児童が担任教師や友達の発言に強く反応する姿や対話を通して主体的に考えを深める姿が観察され,友達との対話が自分の考えを広げ・深めたと感じたと回答する児童が増加した。本研究では,対話を促す活動とリアクション・トレーニングは,①児童が端末を活用した対話的な学びを促進する効果があること,②担任教師は教師による説明中心型授業を見直し,児童が主体的に学ぶ授業展開となる工夫に気づく効果があることが明らかになった。
  • 矢田 敦之
    2025 年58 巻 p. 51-60
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    算数・数学教育は,時代と共に変化する社会の要請や教育理論,技術革新の影響を受け,常に進化を続けている。とりわけ「教育メディア」の変遷は,算数・数学の指導のあり方や学習方法や理解の深さに影響を与えてきた。本稿では,黒板とチョークの時代からデジタル教材の普及,AIやVR/AR技術の台頭に至るまで,算数・数学教育における主要な教育メディアの変遷を辿り,それぞれのメディアの特徴,教育効果や課題について考察する。また,歴史的背景や具体的な事例を交えながら,算数・数学教育における「教育メディア」の功績と限界を分析し,これからの算数・数学教育における教育メディアの展望と課題とそれらへの対応を提示する。今後の算数・数学教育における教育メディアは,複数のメディアを効果的に組み合わせた統合的な学習環境への進化が考えられる,一方,既存の具体的操作を伴う教材・教具の活用の継続の必要性を求める声は残ると考えられる。
  • 若林 雅子, 稲垣 忠
    2025 年58 巻 p. 61-70
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    「GIGAスクール構想」では,1人1台端末を持ち帰り家庭学習に活用する前提となっているが,日常的に端末を持ち帰り家庭学習を実施している学校は少ない。若林・稲垣(2024a,2024b)は,保護者向けに必要な情報リテラシーを整理し,「保護者向けGIGAスタンダード」を定義した。さらに「保護者向けGIGAスタンダード教育プログラム」を開発し,A小学校で実践をおこなった。調査では,保護者の声掛けや見守りへの変容が確認されたが,ネットワークなどの知識の定着には課題が残った。本研究では,「保護者向けGIGAスタンダード」を再定義し,B小学校向けに新たなプログラムを開発・実証をおこない,保護者の変容から有効性について明らかにした。結果,プログラム評価は高く,保護者は見守りや声掛けについて変容したが,保護者の情報格差や子どもの学年により全員が満足できるプログラムとならない等,課題も残った。
  • コロナ対応所属学生体調収集方法について
    植田 寛
    2025 年58 巻 p. 71-79
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本稿では音楽系専門学校におけるコロナ対応に基づく日々の学生の体調報告の収集方法について考察したものである。同専門学校特有の事情も大きく背景に存在しており,全ての初等教育・中等教育・高等教育に幅広くそのまま当てはまるものではない。しかし示唆するものは他の教育機関に無用のものではないと考えられる。特に学生の体調収集方法にGAS(Google Apps Script)を用いたことが特徴的だと挙げられる。たが同様内容は情報処理の専門家が既に様々な条件に当てはめてサービスが巧に行われ,概ねビジネスとして成立している。従ってここでは学術的な研究という位置付けではなく「実践研究」と位置付け,専門学校の学習環境作りをGAS等のプログラムスキルを全く持たない一介の教員が如何に対応できるかを現場の事情にも触れながら考察していく。
  • 柴田 隆史, 山崎 寿代
    2025 年58 巻 p. 80-89
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    学校では教育の情報化が推進され,児童生徒がICTを活用するためにデジタル機器を利用する機会が増えている。本研究では,児童生徒が自らの健康に留意してデジタル機器を適切に利用できるよう支援することを目的として,3つの健康支援動画を開発した。動画では,デジタル機器利用時の視距離の重要性や,眼が疲れる理由と休憩の大切さ,デジタル機器の具体的な活用場面における健康配慮などを取り上げた。また,学校や家庭におけるデジタル機器の利用場面を反映したシナリオを設定した。児童生徒の1年間の利用状況についてアクセスログを分析した結果,動画の視聴は4月末から5月初めの大型連休前や夏休み前,10月の「目の愛護デー」の時期に多く,それらの時期に学校で積極的に活用されていることが示唆された。また,小学校低学年での利用が多いことから,学校では健康支援に積極的に取り組んでいることも示唆された。児童生徒の内容の理解度や習得度に関する検討が今後の課題である。
  • 実習生の不安軽減とリアリティショック軽減を目的として
    舘 秀典, 本池 巧, 戸田 大樹
    2025 年58 巻 p. 90-94
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    保育現場の多様化に伴い,保育士には高度な専門性と柔軟な対応力が求められているが,実習生が経験するリアリティショックは保育士養成における重要な課題となっている。本研究では,この課題に対応するため,VR技術とモーションキャプチャー技術を組み合わせた新しい実習支援システムの開発を行う。システムはフォトグラメトリ技術による園室の3D再現と,深度カメラによる園児の動きの記録を組み合わせ,実習生が自由な視点で保育現場を観察できる環境を実現する。具体的には,複数の深度カメラで取得した園児の骨格データをVR空間上に再現することで,従来の固定視点による動画教材では困難であった空間内での自由な視点移動を可能とした。今後は実習生の視点移動や着目点のログ分析機能を追加し,システムの教育効果の検証を進める。
  • 1970~80年代の通信白書における「メディア」の位置付け
    高橋 敦志, 和田 正人
    2025 年58 巻 p. 95-104
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,高等学校情報科におけるメディア・リテラシー教育実践の可能性の一考察として,高橋・和田(2024a,b)が行った臨教審,中教審,文科相および文部省の1984年から2018年(第1-4期)の教育施策文書の分析に続き,初刊から第1期に相当する1989年までの総務省の通信白書について,「メディア」の位置付けや意味を分析した。分析の結果,1.第1期と同様に「メディア」,「ニューメディア」,「マスメディア」に加え「通信メディア」が頻出していた,2.マス,ニュー,パーソナルのそれぞれのメディア間で重複があった(例えばマスメディア・放送メディア・放送系マスメディア・電気通信系のマスメディア等),3.マス,ニュー,パーソナルのメディアの下位項目では,明確に分けて記述されているものがあった(例えばパーソナルメディア・パーソナル通信メディア・パーソナル情報通信メディア等),の3点が明らかとなった。
  • 東京科学大学での事例研究
    加藤 由香里, レイチェル ゴーマン
    2025 年58 巻 p. 105-110
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    The Institute of Science Tokyo has implemented a series of English seminars for faculty development with a targeted focus on Academic English Presentation rather than English Medium Instruction (EMI). This strategic choice addresses the immediate needs of faculty members who must effectively communicate their research at international conferences and in academic publications. Recognizing the foundational role of academic presentation skills, the program aims to build confidence and competence in delivering impactful presentations, fostering international visibility and collaboration. Structured as one-hour sessions, the seminars enable gradual skill development without overwhelming participants. In response to the recent merger between the Institute of Tokyo Technology and Tokyo Medical and Dental University, these seminars also serve as a platform for mutual learning and academic exchange, contributing to integrating the two institutions and establishing a shared academic culture.
  • 小林 大介, 萩尾 勇太, 安岡 諒, 島野 雄貴, 宮崎 勝
    2025 年58 巻 p. 111-119
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    ソーシャルメディアの普及やアテンションエコノミーの拡大により,かつてないほど大量な情報・コンテンツが世の中にあふれている。こうした状況に対して,「情報的健康」という概念が提唱され,日々提供される情報にバランスよく接する必要性が強調されている。本研究では,情報的健康の実現に向けた検討の一環として,若年層(25~34歳)のニュースへの接触状況に着目し,認知しているニュース項目の実態と普段のメディア利用の関連性を分析した。潜在クラス分析の結果,全項目を認知しているグループや,特定の項目に偏って認知しているグループなどを含めた5つのグループが抽出された。また,多項ロジスティック回帰分析により,認知ニュース数が多いグループでは利用するメディア数が多く,逆に認知ニュース数が少ないグループでは利用するメディア数が少ないことなどを明らかにした。
  • 伊藤 大輝
    2025 年58 巻 p. 120-128
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,社会的自立はどのような経験や支援によって達成されるのかという問いをたて,社会的自立を達成した1名の不登校経験者の“不登校から社会的自立までの経験”をTEMに起こして分析し,社会的自立に至るまでにどのような経験や周りの影響があったのかについて調査を行なった。そのためにまず社会的自立の整理を行い,本研究では国民の三大義務を参考に定義を行った。また経験の分析の結果は,親や学校の教師などの周りの大人の適切な支援や,教育支援センターなどの支援施設の重要性を再確認することができた。また同時に,研究協力者は教育支援センターの先生をロールモデルとし,進路や社会的自立の実現を行なっていた。このことからロールモデルの形成の重要性が明らかになった。一方で協力者自身は不登校という経験もロールモデルを形成し社会的自立を達成するきっかけとなった重要な経験のひとつと捉えていることも明らかになった。
  • ワークショップの実践を通じて
    根本 淳子, 小林 由利子
    2025 年58 巻 p. 129-134
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究は,演劇的手法を教育現場に取り入れるための方法と支援策を明らかにすることを目的とし,教員向けワークショップを実施してその成果を分析した。演劇的手法は,主体的・対話的で深い学びを促進し,創造性やコミュニケーション能力,自己理解の向上に寄与する可能性が指摘されている。本ワークショップでは,インプロ(即興劇)の専門家と協力し,参加者18名を対象に,演劇的手法の効果や実践方法を体験的に学ぶ場を提供した。参加者のアンケート結果から,手法の教育的有用性への高い評価が得られた一方で,導入時の難易度や実施可能性への懸念が示された。また,支援策として教材やモデル事例の提供,研修機会,現場でのサポート体制の必要性が明確になった。今後は,複数回のワークショップを通じて長期的な効果を検証し,日本の教育現場での演劇的手法の適用可能性を高めるための具体的なプログラム構築を進める必要がある。
  • 後藤 康志, 黒上 晴夫
    2025 年58 巻 p. 135-142
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    教職課程の学生で,シンキングツールの有用性は理解できても,自分の教科でどのように使うかについてはイメージ出来ていない学生がいる。そこで,オリジナルボット(GPTs)である「シンキングツール授業構想支援ツール」を活用した。非実装群のレポートと実装群のレポートには差はあるか,ChatGPT 4oとNotebookLMを使って分析した。結果として,非実装群ではツールの一般的な機能説明や,思考の整理に重点を置いている傾向があること,実装群では多様なシンキングツールを使い分け,それぞれのツールが持つ特性を理解した上で,教科の特性に合わせて活用しようとする意図が明確であった。GPTs活用により,学生が具体的な授業での活用事例や,自分の教科でどのように使うかイメージがわき,シンキングツールの特性に応じた使い分けを重視している事が示唆された。
  • 松田 岳士, 竹森 志穂, 金 壽子, 後藤 あゆみ, 上原 星奈, 石川 秀樹, 斉藤 恵美子, 福田 美和子, 黒河内 仙奈, 織井 優 ...
    2025 年58 巻 p. 143-148
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,訪問看護師を対象としたシミュレーション教育研修プログラムにおいて参加動機と自己主導学習レディネスが学習活動にどのように影響したのを検討した。2024年の9月から11月に開催された11コースの受講申し込み者のうち,研究へのデータ提供を承諾し,事前アンケートで自己主導学習のレディネス尺度アンケートに回答した52名を対象に受講理由と自己主導学習レディネスを独立変数と設定し,オンラインコンテンツの受講状況と対面研修への出欠を従属変数として両者の関係性を分析した。具体的には,分析対象の52名を受講状況と出欠状況から4種類に分類して,それぞれのカテゴリに含まれる受講者の特徴を検討した。その結果,受講理由と自己主導学習のレディネスが学習活動に影響を与えることが示唆された。
  • 稲垣 忠, マース アレクサンダー, 高橋 雄介, 庭井 史絵, 登本 洋子, 住谷 徹, 宮 和樹
    2025 年58 巻 p. 149-153
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    探究学習において評価は一般に,育成したい資質・能力について学習過程および学習成果を適切に見取ることを中心に行われる。その際,学習過程を記録したポートフォリオや評価の質的な基準を表したルーブリック等が用いられる。一方,1人1台端末やクラウドサービスの活用が日常的になったことにより,児童生徒の学習活動において,デジタルデータで蓄積・記録される情報が増加している。学習過程の把握の仕方や,学習成果の活用に変化が生じる可能性がある。教員を対象としたインタビュー調査をもとに,探究学習の評価フレームワークを開発した。その結果,探究学習の評価を充実する上で,1)情報収集段階の可視化・共有化の仕組み,2)外部アセスメントと学校の評価を関連づける手法,3)探究の成果を資質・能力だけでなく内容面から評価認定する仕組みの必要性を示唆する結果を得た。
  • 水野 一成, 近藤 勢津子, 吉良 文夫
    2025 年58 巻 p. 154-157
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    小中学生のスマートフォン所有率は上昇傾向にあり,それに伴いSNS(LINE・X・TikTok・Instagram)の利用率も増加している。2023年11月時点でのSNS利用率は63%(中学生は96%)に達した。SNSの利用には,小中学生の人との繋がりを深め,拡大させる正の側面が存在する一方で,犯罪に巻き込まれるなどの負の側面もある。本稿では,SNSを高頻度で利用している子どもの特性を,小学生と中学生に分け,各サービスに対して数量化理論第Ⅱ類を用いて明らかにすることを目的とした。分析の結果,「親と子が直接会話する時間」が短いことが共通の特性として浮かび上がった。「子のICTスキル」は小学生では低く,中学生は高かった。また,「スマホのペアレンタル・コントロール」や「友達の多さ」「親の年齢」との関係は見られなかった。
  • 中尾 教子, 八木澤 史子, 堀田 龍也
    2025 年58 巻 p. 158-165
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,教師が児童に対し,教科書の使い方に関してどのような内容をどのように指導をしているかを明らかにするために,小学校教師を対象にインタビュー調査を実施した。その結果,教科書の使い方に関する初期の指導は,年度の初め頃に実施され,教科書の構造,情報収集の方法を指導することに重点を置いていた。また,児童が教科書を活用できるようになってくると全体指導は減少し,個別指導に移行することなどの傾向が示された。教科書を自律的に活用することが難しい児童に対しては,個別の状況に応じた指導を工夫するとともに,教科書の読解の難しさを伝えながらも,児童が教科書を活用できるよう期待していることがうかがえた。総じて,児童に対して教科書を使う価値を説明しており,また,児童が自律して教科書を読み,学習できるようになることを意図していることが明らかになった。
  • 後藤 宗, 三井 一希
    2025 年58 巻 p. 166-169
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,二次元コードを活用した情報の発信に関する意識を分析することを目的とし,小学校第3学年の児童を対象に二次元コードを活用した情報の発信に関する意識の調査を実施した。二次元コードを活用して情報を発信する方法を学習した児童と学習していない児童の実態に合わせて,村上ほか (2021) の情報活用能力チェックリストを参考に質問紙を作成した。質問紙は,「A 情報と情報技術の適切な活用」「B 問題解決・探究における情報活用」「C 情報モラル・情報セキュリティ」で構成されており,5件法で調査を実施した。回答結果を基に平均値,標準偏差を算出して,対応のない t 検定を行った。結果,事前に二次元コードによる情報を発信する方法を学習することで情報の発信手段が増加し,「A 情報と情報技術の適切な活用」「B 問題解決・探究における情報活用」に関連する意識が向上する可能性が示唆された。
  • 入口 知紗妃, 尾崎 拓郎
    2025 年58 巻 p. 170-177
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    小学校におけるプログラミング教育が必修となり,授業の実施に向けて教員研修教材等が多く提案されている。一方で,教員の専門性や経験の不足及び指導や授業展開の難しさから,プログラミング教育の実践や授業づくりにおいては依然として課題が残る。そこで本研究では,小学校教員におけるプログラミング教育に関する知識と授業実践力の向上を目的として,フィジカルプログラミング教材を活用した新たな体験型の研修の提案を行った。研究の目的を達成するため,本稿では,日常生活の場面から教材活用の可能性を検討する活動で使用するカード教材を開発し,研修内のワークショップで実践した。カード教材を活用したワークショップで得られた効果を分析するため,受講者を対象にアンケート調査を実施した。調査結果から,カード教材を活用したワークショップを通してプログラミング教材の実現可能性に関する理解及び自発的な活用場面想起の端緒となる可能性を見いだすことができた。
  • 高校の探究学習におけるアートベース・リサーチの実践
    羽佐間 香子, 岸 磨貴子
    2025 年58 巻 p. 178-189
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    高等学校の総合的な探究の時間は,「自己の在り方や生き方」を探究する能力の育成を目標とするが,生徒が「自己の在り方や生き方」を見出す方法については十分に議論されていない。本研究では,ジョン・デューイの探究教育哲学に基づき,アートを用いた手法が自己の探究に与える影響を検討することを目的とし,高校生が(1)中学生時代の自分と(2)高校生活における理想の姿をメタファーで表現する活動を実施した。分析の結果,メタファーを活用することで,(1)では「感情や体験の外在化」「自己イメージの再構築」「他者との関係における自己認識」「学びや成長の可視化」が,(2)では「理想の自己像」「知識や能力の獲得」「意識や行動の変容」「高校生活の充実」という側面が明らかとなった。また,2つのメタファーを同時に考察することで,生徒は過去・現在・未来の自己を結びつけ,自己の物語を生成していたことが示された。
  • 大井田 かおり, 斎藤 忍, 河内 裕二, 熊谷 雅良
    2025 年58 巻 p. 190-193
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    従来は家族によって語られることが多かった地方伝説だが,現在は教育機関や教育経験者が伝説の担い手となることが少なくない。大学の視覚芸術専攻者が中心となって,地域住民や国内外観光客に対し伝説を通じた地域プロモーションを実施することも,フォークロリズム的な現象として捉えられる。フォークロリズム的な地方伝説伝承の発展形として,絵画やイラスト等の視覚芸術による伝説展示にとどまらない伝説展示の新たな可能性を示唆することとした。伝説内容の日本語と外国語翻訳を添付した伝説絵の,登場人物の顔部分を空白にし,教員の描いた来場者の似顔絵から作成したお面を当てはめ,来場者が物語の登場人物となる試みを行った。展示は来場者に好評であり,地域印象向上に貢献できた。成人来場者が伝説内容を熟読する傾向を有するのに対し,子供連れはお面作りに注目する傾向があった。よって,子供を対象とした伝説展示の場合は,展示内容を分け,工夫する余地があることがわかった。
  • 振り返りの語彙出現頻度分析を通して
    新村 涼一, 櫻井 幸聖, 松本 奈菜三, 谷塚 光典, 森下 孟
    2025 年58 巻 p. 194-201
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    学習者の主体性の評価や学習状況のモニタリングを目的として,学習者が学習方法や学習内容を省察する「振り返り」は,これまでに一定の型を設けるなど,様々な手法が開発されてきた。しかし,学校現場では実際に学習者によって書かれた振り返りの評価の方法に,難しさを感じている場合も少なくない。本研究では,実際に学習者の振り返りを評価し,評価値ごとの平均文字数や語彙の出現頻度分析を行った。その結果,評価値の高い振り返りでは平均文字数が多く,学習方法では「良い」,学習内容では「大事だ」「大切だ」などの,価値判断に関する語彙が含まれる傾向があることなどが明らかになった。この結果を応用することで,「授業の取り組みで良かったところは~です。なぜなら~だからです。」や「授業で大切だと思ったことは~です。なぜなら~だからです。また,今日の学びを~で活用したいです。」のように,既存の型をよりよくできる可能性が示唆された。
  • 竹之内 桃花, 谷塚 光典, 森下 孟
    2025 年58 巻 p. 202-207
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究では,教員養成学部生の教師力とICT活用指導力の関連性を分析することを目的とした。S大学教育学部3年生を対象に,教師力に関する独自のアンケート調査と文部科学省の「教員のICT活用指導力チェックリスト」に基づくアンケート調査を実施した。データ分析の結果,教師力とICT活用指導力の間に中程度の正の相関が確認され,教師力の高い学生ほどICT活用指導力が高い傾向が示された。また,教師力が高いグループAが低いグループBよりもICT活用指導力の得点が有意に高かったことから,教員養成段階において教師力とICT活用指導力の両方をバランスよく育成する必要性が示唆された。
  • 中西 奈菜, 泰山 裕
    2025 年58 巻 p. 208-211
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    公立中学校で「生徒が自ら学ぶ力」に注目し,授業の中で「学び方を習得し,活用する場面」を取り入れることを意図した取り組みを行った。この取り組みでは,そのような授業に合わせて,1週間を振り返る活動(メタタイム)を行った。振り返りの記述を分析した結果,高成績群の生徒と低成績群の生徒の振り返りに差異がみられた。高い生徒は,学び方や次回への課題について記述していることが多いが,成績の低い生徒は「振り返りをした」や「学び方がわかった」など自身の学習と振り返りを関連づけて書けている生徒は少なかった。しかし「分からないことに気がつくことができた」の項目は高成績群の生徒よりも多く,成績によって振り返りの記述が異なることが明らかになった。それぞれの特徴に応じた指導が期待される。
  • 山崎 克洋, 平山 靖
    2025 年58 巻 p. 212-217
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    本研究の目的は,スタプロによる採用前研修の効果を検討することである。スタプロは2023年度4月に採用された新任教員を対象に実施した採用前研修である。参加者へのアンケートを分析した結果,学級経営,保護者対応,学級通信,これらの教育技術への意識について,赴任前の不安を解消する効果が示唆された。また,参加者へのインタビュー調査の結果から,採用前研修をすることが,教師になった際の学級経営を支える効果があることが示唆された。
  • 村川 弘城
    2025 年58 巻 p. 218-221
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    算数教育において,数に関する概念を獲得するために,一つの数を他の数の和や差や積で捉えるといった,数の合成と分解が取り入れられている。数の合成と分解を行わせる教材として,村川(2012)の開発したカードゲーム型学習教材「マスピード」がある。しかしマスピードはそのルール上,単純な数の合成と分解を行う方が,戦略上有利になる可能性がある。数に関する概念の獲得を目指すためには,より複雑な数の合成と分解が促される必要がある。そこで本研究では,より複雑な数の合成と分解を促すようなアプリ版のマスピードを開発することを目的とした。開発を行い,小学校2校に配布し,5ヶ月間にわたって利用させた。実施の前半部分と後半部分で比較した結果,複雑な数の合成と分解が促されていることが明らかになった。
  • 和田 正人, 高橋 敦志
    2025 年58 巻 p. 222-231
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    教員養成系大学生20名がメディア・リテラシー学習において,自分のメディア接触経験について生成AIを用いた動画制作をすることによる,著作権侵害リスクと授業での利用とのアンビバレンスを明らかにした。動画制作後でも,著作権侵害リスクが残り,授業の利用可能性が100%未満の学習者が半数以上であった。このことから,メディア史動画制作には著作権侵害リスクがある一方で,授業でのその動画の利用可能性が100%とは考えないというアンビバレンスな態度があることが明らかになった。また,動画制作前には,著作権侵害リスクが生成AI利用動画の方が生成AI非利用動画よりも高かったものの,動画制作後にはその違いはなかった。そして動画制作後にリスクが低くなることもなかった。さらに学習者は生成AIの動画制作における様々な問題を指摘しており,それは現在の生成AIが日本の論理的思考と異なっていることが想定された。
  • 清和田 順, 稲垣 忠
    2025 年58 巻 p. 232-236
    発行日: 2025/02/16
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス
    2019年(令和元年)12月に文部科学省が発表したGIGAスクール構想は,新型コロナウイルス感染症の世界的なまん延により計画が前倒しされた。2020(令和2年)年度補正予算により,小中学校等の児童生徒全員に1人1台端末が急遽整備され,ネットワーク環境の整備が急務となった。仙台市では,2020年(令和2年)11月10日に本市と東北学院大学が共同研究に関する契約を締結し,1人1台端末を学習等でSINETを活用することとなった。しかし,MEXCBTでの全国学力テストが実施できない端末が出るなどの問題が生じた為,抽出した56校のネットワーク速度を定期的に計測しながら様々な原因を追及・改善を図った。その結果,多くの問題が解消され,SINETをより効率的に活用することができようになった。これにより,教師の指導や子供の学習の質がさらに高まり,「子供の力を最大限引き出す学び」につながることが分かった。
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