抄録
制度信頼の低下が広く憂慮されているが,それが政治参加を蝕むのかはよく知られていない。アジアンバロメータ調査データを用い日本を含む東アジア・東南アジアの政治文化的背景を考慮しつつこのことを比較・検討した。政治文化はアグリゲートレベルの変数として扱い,中央政府への制度信頼と政治参加との関連をHLMによる階層的な解析にかけた。全般的に政府への信頼は統治政治参加の度合いを下げ,リベラルな民主主義を支持することが参加につながる経路も析出されなかった。一方で,政治関与が高くかつ政府への信頼の低い人々がむしろ参加する傾向が明瞭であった。アジア的な政治文化価値に関連して,パターナリズムが高い地域では政治関与が高く政府信頼の高い人々の参加が促進されていた。他方,広く憂慮されるアジア的価値の参加抑制というマイナス側面は,調和志向の効果として見られた。