2014 年 30 巻 1 号 p. 143-158
この論文の目的は,西欧の右翼ポピュリスト政党に見られた,経済政策の転換について検討することである。具体的には,以下の2つの論点を提示する。まず,台頭初期の1980年代においては新自由主義的な改革を主張していたこれらの党が,1990年代半ば以降,社会保障を重視して,「福祉排外主義」と呼ばれる姿勢に転じたことを明らかにする。次に,こうした方針転換が党勢の維持と拡大に貢献したことを示す。前者については計量的な手法を用いて,後者については,経済政策を争点の1つとして分裂を経験したオーストリア 自由党とデンマークの進歩党の事例を比較して,仮説を検証する。西欧における右翼ポピュリスト政党の研究は,マクロな台頭要因の研究から,党勢維持をめぐるメゾ・レベルの研究に関心を移している。本稿は,先行研究の間で論争となっている経済政策と党支持の関係について,新たな知見を提示する。