選挙研究
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30 巻, 1 号
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  • 概要と展望
    谷口 尚子
    2014 年 30 巻 1 号 p. 5-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/01/05
    ジャーナル オープンアクセス
    政治学における因果実証主義や学際性の強まり,経済学・心理学・社会心理学など隣接諸科学における実験アプローチの発展を背景として,政治学においても実験研究が再注目されている。実験研究は政治学をより豊かにするか。本稿は,Kinder and Palfrey (1993),Lupia (2002),McDermott (2002),Druckman,Green,Kuklinski,and Lupia (2006, 2011),Morton and Williams (2010) などの論考に基づき,政治学を含む社会科学で行われている実験法の種類とそれぞれの基本的性格,実験法の長所と短所,政治学で行われている実験研究のトピック,政治学実験のメリットと問題点を整理する。その上で,政治学における実験研究の発展可能性,また実験を行う際の視点・留意点について述べる。
  • 黒阪 健吾, 肥前 洋一, 芦野 琴美
    2014 年 30 巻 1 号 p. 16-30
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/01/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では,デュヴェルジェの法則とその中選挙区への応用であるM+1ルールの頑強性を実験室実験により検証する。単記非移譲式の1つの選挙区を想定し,実験参加者たちが有権者として4人の候補者たちの中から1人に投票するという設定で1議席(小選挙区)と2議席(中選挙区)を比較したところ,1議席のほうが票が少数の候補者に集中するというM+1ルールの比較静学が支持された。しかしながら,いずれの議席数でもM(議席数)+1人より多くの候補者に票が分散した。したがって,M+1ルールの比較静学は頑強と言えるが,ちょうどM+1人に票が集中するためには,本実験では排除された他の要因が必要であると考えられる。
  • 政党支持質問と価値観質問における順序効果
    日野 愛郎, 山崎 新, 遠藤 晶久
    2014 年 30 巻 1 号 p. 31-43
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/01/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,人々が世論調査に回答する際に視覚的情報によってどのような影響を受けるのかという疑問を解明することを試みる。具体的には,順序効果,特に先に提示される選択肢が回答されやすくなるとされる初頭効果が生じる条件を検討し,アイトラッカー(視線測定器)を用いて回答者の視線を観察することを通して検証する。選択肢の提示順序を含む調査回答データとアイトラッカーから得られる視線追跡データの双方を分析した結果,回答者にとって事前知識があり選択肢が対立項目から構成される政党支持の質問においては初頭効果が生じない傾向にあることが明らかになった。一方,一般的に事前知識がなく選択肢がいずれも望ましい合意項目から構成される価値観を測定する質問においては,初頭効果が生じやすいことが確認された。以上の結果は,質問の内容によって順序効果の発生メカニズムが異なるとする本稿の仮説を首肯するものであった。
  • Deliberative Poll実験を踏まえて
    坂野 達郎
    2014 年 30 巻 1 号 p. 44-55
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/01/05
    ジャーナル オープンアクセス
    無作為抽出市民を活用した討議型議民主主義手法の草分け的存在である市民陪審と計画細胞が構想され社会実験が始まってから約40年以上の時が経過した。日本でも,社会実験を取りあえず実施してみるという段階は一段落つき,次の段階を迎えている。これまでの経験からは,討議倫理に則ったコミュニケーションの場を実験的に創りだすことに概ね成功している。しかし,ミニ・パブリックスというミクロな場で形成された判断は,社会全体の判断として受容されるに至っていない。ミニ・パブリックスをめぐるミクロ-マクロ問題をいかに解決するかが今問われている。本論考では,ミニ・パブリックスの反実仮想性というユニークな特徴に着目し,同問題解決のための糸口を探る。
  • Naoki WATANABE
    2014 年 30 巻 1 号 p. 56-67
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/01/05
    ジャーナル オープンアクセス
    This note gives a primitive idea on coalition formation in a weighted voting experiment. The experimental protocol requires that the roles of subjects be partially fixed throughout each session and that each subject be in favor of only one proposal including his or her own at a time. In two four-player weighted voting games with no veto player, the orders of observed frequencies of minimal winning coalitions (MWCs) were the same as those of predicted ones derived from the following presumptions. (1) Each voter prefers a MWC to another MWC when his or her relative voting weight in the MWC is larger than that in another MWC. (2) The probability of each MWC occurring depends on a score the MWC makes in the Borda count, given such individual preferences of voters over MWCs. Tensions among MWCs in the bargaining process affected the resource allocation among the members within each MWC, which violated Gamson's law in some MWCs. Nevertheless, the above prediction was robust to small violations of Gamson's law.
  • 熟議の政治的メカニズム
    三村 憲弘, 山崎 新
    2014 年 30 巻 1 号 p. 68-80
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/01/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,熟議を通した有権者の政策態度の変化における政治的メカニズムを,調査回答者に反論を提示し意見の変化を見るというJackman and Sniderman (2006) の枠組みを改変して応用した調査実験によって検討する。ここでの着眼点はふたつある。ひとつは反論提示の主体の属性の問題であり,もうひとつは反論の受け手である回答者の属性,特に政治や政策に対する関与・党派性・政治知識が果たす役割である。分析の結果,政治にも政策にも関与していない人々においては,反論によって熟考が起こることで態度変化が見られたが,政治や政策に関与している人々においては,そのような影響は確認できなかった。政治や政策に関与している人々においては,熟考ではなく,反論主体の影響や,反論主体と党派SID,政治知識との交互作用による態度変化が確認された。これらは,熟議にまつわる政治的コンテクストの重要性を示唆している。
  • 認知神経科学における研究蓄積過程を手掛かりに
    境家 史郎
    2014 年 30 巻 1 号 p. 81-95
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/01/05
    ジャーナル オープンアクセス
    政治学において自然科学を範とする傾向がますます強まり,「より科学的」な研究を行うがための方法論争が盛んである。近年の実験的手法の流行もこの文脈において理解できる。しかしそもそも政治学者の想定する自然科学像ないし自然科学における研究蓄積過程のイメージは,どれだけその実態に即しているのだろうか。本稿では筆者自身のfMRI実験(Sakaiya et al. 2013)の経験もふまえ,認知神経科学における研究蓄積過程の実際を概観する。その結果,メカニズム追究,少数事例研究,帰納的分析といった,政治学にお いて意義の争われてきた方法が,自然科学分野において積極的に採られていることが示される。また,実験(という政治学者が理想とする検証方法)が可能な自然科学分野においても,少数の検証結果によって最終的結論に至るわけではなく,実際には同様の目的の実験を反復し,あるいは他のアプローチを併用するなど,きわめて慎重に議論が進められていることも示される。以上の観察は,政治学研究の「科学的」発展のための新たな方法論的示唆を与える。
  • Masahisa ENDO, Willy JOU
    2014 年 30 巻 1 号 p. 96-112
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/01/05
    ジャーナル オープンアクセス
    Both scholarly and journalistic accounts in Japan have long used the terms ‘conservative (hosyu)’ and ‘progressive (kakushin)’ to characterize political parties. However, the question of whether the general public shares a common view of party positions along the conservative-progressive spectrum has not heretofore been empirically investigated. The present study attempts to fill this vacuum by examining how different age cohorts perceive 1) overall party system polarization and 2) the positions of parties consistently identified by scholars as anchoring the two ends of the ideological scale. Analysis of surveys covering nearly three decades reveals a significant positive relationship between age and perceived polarization that has strengthened over time. Furthermore, the conventional view of parties' ideological positions widely held among political scientists is no longer shared by younger voters. These findings, which are mostly attributable to a generational effect, call for a fundamental reevaluation of the role of ideology in Japanese party politics.
  • 有権者個票データによる分析
    中井 遼
    2014 年 30 巻 1 号 p. 113-127
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/01/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は新興民主主義国である中東欧10カ国を対象とし,どのような個人的要素が投票参加の有無を規定するのか分析したものである。これらの諸国の投票率にかんし,制度的変数や社会経済的変数といったマクロ要素の効果については多く検証されてきたものの,世論調査データの不足もあり有権者個人レベルの要素が持つ効果についての検証は近年はじまったばかりである。本研究は,中東欧諸国の文脈的背景に配慮しつつEuropean Social Surveyの中東欧諸国データを用いて,どのような属性をもつ人々が投票しているのか分析した。分析からは,学歴・年齢・議会への信頼の3要素が中東欧横断的に投票参加を規定することが判明した一方,所得や情報接触頻度などについては国によって効果に差異があることが明らかになった。本結論からは,議会への信頼の低下が今日の中東欧における低投票率状況を規定していることも示唆された。
  • 明治22年衆議院議員選挙法未成案をめぐって
    末木 孝典
    2014 年 30 巻 1 号 p. 128-142
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/01/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,明治22年に成立した衆議院議員選挙法の未成案に基づいて,最初の小選挙区制における選挙区人口の実数と選挙区割りについて明らかにするものである。従来の研究では,金子堅太郎の述べた,人口12万人に議員1人を配分し,18万人を超えると2人とする基準が用いられてきた。しかし,未成案によってそれが誤りであることがわかった。また,未成案と成案を比較することによって,未成案段階での選挙区人口がそのまま成案でも使われたこと,変更は基本的に行政区分の変化を反映させ,地域事情をふまえたものであり,区割り・人口の基準を外れるのは離島の扱いを変更したものだけであること,ゲリマンダリングが行われた形跡がないことを明らかにした。近年,選挙研究においては歴史分析と計量分析との共同研究の意義が強調される。今回の新史料を用いた計量分析を期待したい。
  • 西欧の右翼ポピュリスト政党における政策転換
    古賀 光生
    2014 年 30 巻 1 号 p. 143-158
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/01/05
    ジャーナル オープンアクセス
    この論文の目的は,西欧の右翼ポピュリスト政党に見られた,経済政策の転換について検討することである。具体的には,以下の2つの論点を提示する。まず,台頭初期の1980年代においては新自由主義的な改革を主張していたこれらの党が,1990年代半ば以降,社会保障を重視して,「福祉排外主義」と呼ばれる姿勢に転じたことを明らかにする。次に,こうした方針転換が党勢の維持と拡大に貢献したことを示す。前者については計量的な手法を用いて,後者については,経済政策を争点の1つとして分裂を経験したオーストリア 自由党とデンマークの進歩党の事例を比較して,仮説を検証する。西欧における右翼ポピュリスト政党の研究は,マクロな台頭要因の研究から,党勢維持をめぐるメゾ・レベルの研究に関心を移している。本稿は,先行研究の間で論争となっている経済政策と党支持の関係について,新たな知見を提示する。
  • 2014 年 30 巻 1 号 p. 159-172
    発行日: 2014年
    公開日: 2018/01/05
    ジャーナル オープンアクセス
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