日本咀嚼学会雑誌
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全部床義歯装着者の “噛み易い側” の簡単な判別法
西山 雄一郎大貫 昌理細井 紀雄佐々木 真東條 敏明椎名 順朗塩澤 光一柳沢 慧二
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2002 年 11 巻 2 号 p. 123-130

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抄録
本研究では, 「舌中心線上に載せた試料が被験者の左右のどちら側の歯列に運搬されて咀嚼が開始されるか」という舌による試料の運搬方向を指標にすることで, 全部床義歯装着者の “噛み易い側” を客観的に判別することができるか検討した.被験者は, 義歯の平均使用年数が7年以上の全部床義歯装着者15名とした. 初めに節分法により各被験者の左右それぞれの咀嚼値を求め, 比較した. 次に, 被験者の舌背の中心線上に約2mmのゼラチン試料を1個載せ, 舌が左右何れの歯列に運搬するかを観察した. 加えて, ゼラチン試料の替わりにロールワッテを用いた方法についても検討した.
その結果, 自覚的な “噛み易い側” が存在した12名の内11名では, “噛み易い側” の咀嚼値が反対側の咀嚼値よりも大きな値を示した. また, 舌中心線上に載せたゼラチン試料およびロールワッテを舌が “噛み易い側” に運搬する割合いは, 何れの被験者においても, 反対側の歯列に運搬する割合いに比べて高い値を示し, この傾向はゼラチン試料よりもロールワッテにおいて著明であった. これらから, 全部床義歯装着者の舌背の中心線上に載せたゼラチン試料あるいはロールワッテの舌による運搬を指標にすることで, “噛み易い側” を簡単かつ客観的に判別できる可能性が示唆された.
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