2014 年 30 巻 1 号 p. 44-55
無作為抽出市民を活用した討議型議民主主義手法の草分け的存在である市民陪審と計画細胞が構想され社会実験が始まってから約40年以上の時が経過した。日本でも,社会実験を取りあえず実施してみるという段階は一段落つき,次の段階を迎えている。これまでの経験からは,討議倫理に則ったコミュニケーションの場を実験的に創りだすことに概ね成功している。しかし,ミニ・パブリックスというミクロな場で形成された判断は,社会全体の判断として受容されるに至っていない。ミニ・パブリックスをめぐるミクロ-マクロ問題をいかに解決するかが今問われている。本論考では,ミニ・パブリックスの反実仮想性というユニークな特徴に着目し,同問題解決のための糸口を探る。