抄録
インドにおける選挙制度改革をめぐる議論は,わが国におけるそれとは異なり,選挙の公正性や透明性の確保,政治腐敗の防止といった観点からのものが中心となっている。1970年代以降,さまざまな政府機関や政府任命の委員会によって選挙制度改革に関する提言がまとめられてきたが,そうした提言が実際の政策決定に反映された例は少ない。この背景として,選挙制度改革をめぐる議論自体が,社会政策を行う上での制約や政党政治の影響などを受けてきたことがあると思われる。しかしその一方で最近では,「ガバナンス」 に対する有権者の意識の高まりによって,市民団体による盛んな選挙監視活動など,選挙制度改革をめぐる議論に新たな要素が加わっている。こうした市民団体の活動は,インドにおいて選挙制度改革を進めていく上で,今後さらに重要になるものと思われる。