抄録
本研究では,党派性の三相モデルを構成し,政党評価と党派集団アイデンティティという党派性の「二重構造」と多次元的な党派性の「方向」を統合的に捉えることによって,どういった党派的対立軸において政党評価と党派集団アイデンティティが結び付いているのか,そして,そのことがそれぞれの対立軸における党派性の安定性にどのような影響を与えるのかを検証する。2005年と2007年の日本の世論調査データを用いて分析を行った結果,両側面が結び付いた軸とそれぞれの側面ごとの軸が析出され,両側面が結び付いた軸において人々が持つ党派性は安定的で,その他の軸における党派性の変動を規定することが明らかになった。これらの知見は,日本人の党派性において,政党評価に基づく合理的学習だけでなく,党派集団アイデンティティに基づく社会での表明的なメカニズムが重要な役割を果たしていることを示唆している。