選挙研究
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36 巻, 1 号
選挙研究
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 政党の重要性の分析
    小川 寛貴
    2020 年 36 巻 1 号 p. 7-22
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,マルチレベルの政治アリーナが有権者における政党の重要性にいかなる影響を与えるかを分析した。日本には少なくとも6つの選挙が存在し,それらは相互に影響を与え合うものと考えられる。先行研究では,一部の選挙ペア間の影響は議論されてきたものの,複数の政治アリーナの影響を同時に考慮した分析は行われてこなかった。そこで,本研究では衆院選世論調査データを用いて,参院選,都道府県議会選,知事選,市区町村議会選を考慮した分析を試みた。分析からは,参院選におけるSNTV選挙区の存在は政党への信頼度を低下させ,知事選における政党の不在,すなわち相乗り知事や無党派知事の存在は,政党本位の投票を減少させることが明らかになった。
  • 亥年現象の解明に向けて
    Jaehyun SONG, 日野 愛郎
    2020 年 36 巻 1 号 p. 23-34
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,異なる種類の選挙が短期間に行われる際に有権者がどのような投票行動を取るかを明らかにすることである。統一地方選挙が実施される年の参院選において投票率が低くなる「亥年現象」は,多くの研究が「動員」に原因を求めてきた。本研究は,動員仮説に加え,対抗仮説として有力視されている有権者が短期間に何度も投票所に足を運ばなければならないことのコストに着目した「投票疲れ」仮説についてもパネル調査データを用いて検証した。具体的には,統一地方選挙そのもの,または投票が行われなかった選挙区(無投票選挙区)に注目し,選挙の実施有無を傾向スコアでマッチングした分析を行った。分析の結果,有権者レベルにおいて亥年現象は観察されるものの,政令市の有権者の場合,投票疲れが,その他の市区町村の有権者においては動員の不在が主な原因であったことが明らかになった。
  • 参議院議員の政策活動
    石間 英雄, 建林 正彦
    2020 年 36 巻 1 号 p. 35-48
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    参議院議員はどのような政策活動を行い,どのような利益を代表しているのであろうか? 日本の二院制には権限関係が対等であり選出方法が両院で異なるという特徴が存在し,両院を横断する形での政党組織の形成を促す。また選挙区定数などの選挙制度の違いは,衆参両院議員間の政策的関心の相違を生み出すであろう。この視点を踏まえ,本論文では自民党政務調査会内における参議院議員の政策活動を分析し,強い第二院の存在が戦後日本の政党政治を形づくってきたことを明らかにした。 具体的には,自民党政務調査会部会名簿をデータ化し,衆参両院議員の部会所属パターンを比較した。その結果,参議院議員は内閣部会や社会部会,地方行政部会などの部会に所属しがちであり,全国規模の利益団体や都道府県の利益といった衆議院議員とは異なる利益代表を行っていたことが示唆された。
  • 大阪市民を対象とするサーベイ実験より
    善教 将大
    2020 年 36 巻 1 号 p. 49-61
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では大阪で,有権者が国と地方で異なる政党を支持する政党支持のねじれが生じていることを,大阪市民を対象とするサーベイ実験から明らかにする。大阪では,自民支持者の一定数が維新の候補者に投票する傾向にある。本稿は,政党支持のねじれがこの自民支持層の票割れの原因であることを主張する。分析の結果明らかになったのは次の3点である。第1に大阪市民の中には,国政では自民党を支持する一方,大阪の政治では維新を支持する有権者が存在する。第2にそのような国と地方の間の態度変容は,国政自民とは異なる低い評価を「大阪自民」に下していることによる。第3に政党支持を,国政ではなく大阪の政治における支持と操作化した場合,自民支持層の票割れは緩和される。これらの分析結果は,既存の政党支持の操作的定義の限界を示すと同時に,選挙制度の制度間不均一性が有権者の政党認識を逆に精緻化させる場合もあることを明らかにしている。
  • 安定に至る二重過程を析出する
    三村 憲弘
    2020 年 36 巻 1 号 p. 62-76
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,党派性の三相モデルを構成し,政党評価と党派集団アイデンティティという党派性の「二重構造」と多次元的な党派性の「方向」を統合的に捉えることによって,どういった党派的対立軸において政党評価と党派集団アイデンティティが結び付いているのか,そして,そのことがそれぞれの対立軸における党派性の安定性にどのような影響を与えるのかを検証する。2005年と2007年の日本の世論調査データを用いて分析を行った結果,両側面が結び付いた軸とそれぞれの側面ごとの軸が析出され,両側面が結び付いた軸において人々が持つ党派性は安定的で,その他の軸における党派性の変動を規定することが明らかになった。これらの知見は,日本人の党派性において,政党評価に基づく合理的学習だけでなく,党派集団アイデンティティに基づく社会での表明的なメカニズムが重要な役割を果たしていることを示唆している。
  • マルチレベルガバナンスの観点から
    大西 裕
    2020 年 36 巻 1 号 p. 77-90
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,選挙ガバナンス研究会が2度にわたって実施した全国市区町村選挙管理委員会事務局アンケート調査(2013年,2017年)の分析を通じて,日本の選挙管理機関の変化を説明する。地方分権改革以前,日本の選挙管理は中央集権的で総務省が主導権を握っていたが,改革によって中央集権制が否定されて以降,マルチレベルガバナンスの複雑さが表面化し不安定なものになった。国と地方の選挙管理機関は相互に独立しているのに,業務上は垂直的に相互依存しており,地方においては地方政治家の影響が及びやすい。それゆえ,2013年選管調査は,日本の選管とそのパフォーマンスには多様性が存在することを明らかにした。ところが,2017年調査では地方の選管が中央政府に応答的に変化していることがわかる。変化の背景にあるのは,積極的投票権保障をめぐる業務増大である。それが地方政府の首長をして選管の専門性向上への投資を許したのであろう。
  • 勝又 裕斗
    2020 年 36 巻 1 号 p. 91-103
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
    戦前・戦後を通して広く利用されてきた中選挙区制は,政党による候補者擁立戦略と有権者による戦略投票をユニークな均衡へと導く。定数Mより1多いM+1人の有力な候補者によって議席が争われるというM+1法則はその理論的な予測である。この理論によると,当選者間の得票は均等化し,デュベルジェ均衡においては落選者間で得票が次点候補者に集中する。この検証には有効候補者数が指標として用いられてきたが,本研究ではその問題点を指摘する。そして,これに替わる新たな指標を提案し,選挙競争の歴史的変化を検討する。その結果,当選者間の得票の均等化が一度進行した後に不安定であった一方で,落選者間における得票の次点候補者への集中は一時的な揺れ戻しを経験しつつ進んでいったことが明らかになった。この結果からは,M+1法則が文脈とアクターの戦略的対応に影響されながら競争を規定していることが示唆される。
  • 2020 年 36 巻 1 号 p. 105-111
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 2020 年 36 巻 1 号 p. 119-
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
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