2020 年 36 巻 2 号 p. 108-125
本稿の目的は,都道府県の経済データと2012,2014,2017年の衆議院選挙データを分析し,経済が選挙結果に与える影響を明らかにすることである。日本の経済投票に関する先行研究は,サーベイ・データによる研究が中心で,集計データによる研究が少ない。その理由として,第1に,時系列データの場合,選挙ごとに異なる政治状況や経済状況の影響を除去できないこと,第2に,地域間のクロスセッション・データの場合,地域特性や候補者特性の影響を除去できないことが挙げられる。本稿では,安倍内閣の下で実施された衆議院選挙のデータを利用し,その選挙に出馬している同じ候補者の得票率の差を計算したデータを用いることで政治状況や候補者特性などを除去する。そして,このデータを用いて,経済が選挙結果に与える影響を分析する。分析の結果,経済が選挙結果に与える影響は,かなり限定されたものであると結論付ける。