抄録
症例は54歳の男性で,血清CA19-9高値の精査目的のCT検査にて甲状腺腫瘤を指摘された。消化器系の探索を行ったが,異常は認めなかった。甲状腺腫瘍の細胞診にて乳頭癌との診断を得たため,甲状腺全摘+リンパ節郭清術を行った。血清CA19-9は術前では74.6U/mLと高値を示していたが,術後は基準範囲内まで低下した。摘出標本の免疫組織染にて,約50%の腫瘍細胞でCA19-9が陽性であり,CA19-9の産生を証明した。血清のCA19-9が上昇しているにも関わらず,消化器系に異常を認めない場合は,消化器疾患の検索のみにとどめることは不十分であり,甲状腺や乳腺といった消化器以外の検索も必要であることに注意を要する。