日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
特集2
甲状腺腫瘍細胞診の問題点
覚道 健一谷口 恵美子若狭 朋子山下 弘幸
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2014 年 31 巻 2 号 p. 99-103

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抄録

日本甲状腺学会は,甲状腺結節取扱い診療ガイドライン2013を出版した。甲状腺結節の診療では細胞診が重要な役割を持つ。しかし細胞診で30%以上の症例は,良性・悪性の結論が出ない「検体不適」,「鑑別困難」,「悪性疑い」に診断される。甲状腺結節取扱い診療ガイドラインでは,これらを実地臨床の場でどのように取り扱うかの解決策を示した。細胞診で鑑別困難に分類された症例は,画像などの臨床検査と合わせて手術対象例を絞り込む。細胞診でも,鑑別困難をさらにリスク分類することを推奨した。まず鑑別困難を「濾胞性腫瘍」と「その他(濾胞性腫瘍以外)」に分類する。濾胞性腫瘍群は,悪性の可能性の高い(favor malignant)と良性の可能性が高い(favor benign)に分類することを推奨した。すなわち鑑別困難群の大半(70~90%)を占める良性結節患者に無用な診断的葉切除術を適応しないことを求めている。欧米では全例に診断的葉切除術が薦められるのに対し,日本では「濾胞性腫瘍」患者でも,他の臨床検査項目が良性の患者は経過観察も選択肢となる。濾胞性腫瘍の亜分類を省略した診断様式を選択すると,国際的診断様式と読み替え可能な6カテゴリー分類に変換できる。平易な診断用語を用い,悪性の確率,甲状腺結節の性状が類推しやすい言葉を用い利用者の利便性を図った。

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