抄録
症例は78歳男性。18年前に上咽頭癌で化学療法+放射線療法施行。5年前びまん性甲状腺腫大を指摘されて当科を受診し,穿刺細胞診で悪性リンパ腫が疑われた。Ann Arbor分類IEの甲状腺悪性リンパ腫の疑いとして,診断目的にて甲状腺峡部部分切除を行った。病理組織結果は甲状腺MALTリンパ腫であり,術後に36Gyの放射線治療を行った。外来経過観察中,突然に汎血球減少を認め,当院血液内科で放射線療法が原因と考えられるAPLと診断された。ATRA,ATOの治療で完全奏効が得られ,加療後1年6カ月の現在再発の兆候はない。限局期における甲状腺原発MALTリンパ腫では,甲状腺全摘単独治療が推奨される。特に放射線療法の既往を持つ患者に対しては治療関連悪性腫瘍の危険性を考慮して外科的治療を優先することが推奨される。また生検診断後に放射線療法や化学療法などの追加治療を行った場合は二次癌発生の可能性を念頭においた経過観察を要する。