抄録
症例は66歳の男性で,右頸部の腫脹を主訴に受診し,頸部超音波検査で甲状腺右葉に60mm大の腫瘤を認めた。穿刺吸引細胞診で悪性(低分化癌の疑い)と診断し,甲状腺全摘術,右頸部リンパ節郭清を施行した。術後2カ月目のCTで多発肺転移,上大静脈内に腫瘍栓,右頸部リンパ節腫大を認めた。当初,病理組織学的には血管肉腫が疑われ,外部施設にコンサルト中であったため,化学療法としてパクリタキセルを投与した。術後4カ月目のCTでは多発肺転移,頸部リンパ節は増大しPDとなった。この時点で甲状腺平滑筋肉腫と確定診断されていたため,MAID療法へ変更した。術後6カ月のCTでは肺転移,静脈腫瘍栓,頸部リンパ節は縮小しPRとなったが,腎機能の悪化を認めたため化学療法は減量して投与を継続した。術後1年2カ月まではPRを維持でき,その後腎機能がさらに悪化したため,化学療法を中止し経過観察中である。