医療訴訟は近年再び増加傾向にあり,年間800~900件程度の医療訴訟が提起されている。医事紛争全体の内,訴訟になる件数はごく一部であることを踏まえると,全国で発生している医事紛争の件数の多さを実感せざるを得ない。医事紛争を防止する対策はぜひ検討しておきたいところである。医事紛争については,その争点を突き詰めていくと,多くは2つの視点,つまり「説明」と「記録化」というキーワードに集約される。「説明」の核となるのはご存知の通り,患者の自己決定権の確保のための説明である。「記録化」の核となるのは診療行為のカルテ類への記録である。これらは言葉に表すといかにも当たり前のようであるが,一体何をどの程度説明すべきなのか,記録について特に留意すべき点は何かということについては意外と見落としがちである。本稿では,「説明」と「記録化」について留意すべき点を具体的に述べさせて頂いている。