甲状腺・副甲状腺疾患の手術後に起きる術後出血は,約1~2%に起きると報告されており,初期対応を誤ると深刻な事態を招く術後合併症である。頸部は比較的狭いコンパートメントのため切開創が縫合された後に起きる出血はコンパートメント内の圧力を急激に上昇させ気道閉塞を引き起こす原因となる。医療安全調査機構の警鐘事例に甲状腺の手術後に起きた術後出血により不幸な転帰をたどった事例が報告されている。その報告をもとに甲状腺・副甲状腺疾患の手術後に起きる術後出血の注意点を改めて検証する。事例の概要は以下の通りである。40歳代 男性 バセドウ病と診断され甲状腺亜全摘術を施行。手術約12時間後に術後出血から心肺停止となり,いったん蘇生するが約1カ月後,腎不全,肺炎,心外膜炎を併発し死亡した。(医療安全調査機構の評価結果報告書概要 平成24年度 事例132より抜粋)