甲状腺進行癌にて一側反回神経を合併切除する例においては,各種神経再建術や甲状軟骨形成術Ⅰ型(TP Ⅰ)などの音声改善手術の追加や併施を行い,発声機能の温存・改善を図ってきた。腫瘍切除時は,下咽頭収縮筋切断・輪状甲状関節離断・甲状軟骨下角鉗除を症例に応じ施行し,顕微鏡下に反回神経末梢側を同定してから切断している。神経再建方法は,端端縫合可能例は少なく,頸神経を用いた間置移植,頸神経ワナ縫合を基本としている。進行癌例においては迷走神経合併切除例もみられ,残存した迷走神経や舌下神経を用いた再建も行ってきた。神経再建のみ施行した15例中4例において術後MPTが5秒以下と不良であり,2例においてTP Ⅰを追加した。追加手術を躊躇する高齢者がみられたことから,70歳以上を主な対象に神経再建術とTP Ⅰの併施を15例で行った。本法においては術後早期から発声機能が保持または改善し,音声改善手術をさらに追加した例を認めなかった。