症例は73歳女性。高血圧の既往あり。右上腹部痛にて前医を受診,CTにて後腹膜腫瘍を認め,精査目的に当院に紹介となった。腹部造影CTでは右腎下部に32×20×37mm大の境界明瞭な腫瘤を認めた。辺縁の造影効果を認めた。超音波内視鏡像は多房性で血流を伴い,MRIではT1強調像で低信号,T2強調像では高信号を呈した。FDG-PET/CTでは腫瘍部にSUVmax8.3の不均一な集積,MIBGシンチグラムでも腫瘍に一致した集積を認めた。ドパミンは血中,尿中ともに基準値の3倍以上であった。以上から,後腹膜原発機能性paragangliomaと診断し,腹腔鏡下後腹膜腫瘍切除を行った。周術期問題なく,術後第4病日で退院し,術後1年時点で血中ドパミンの上昇は無く,再発なく経過している。組織学的には腫瘍細胞のsynaptophysin陽性,CGA陽性を認め,S-100陽性支持細胞が確認された。細胞質内には鉄染色陰性の黒褐色の顆粒(pigment)を認め,病理診断はpigmented paragangliomaとした。極めて稀な疾患であるため文献的考察を含めて報告する。