2022 年 39 巻 2 号 p. 87-91
術前から一側性反回神経麻痺を認める症例は,高リスク症例であり,原則として甲状腺全摘術を必要とする。ただし両側反回神経麻痺をきたすリスクがあり,状況によっては片葉切除に留めることもありえる。甲状腺全摘術を行うのであれば,健側の麻痺を予防するため,術中反回神経モニタリング(IONM)は必須である。IONMの使用を前提としたフローチャートがガイドラインで提唱されているが,本稿ではその補足に加え,二期的手術などの異なるアプローチも提示する。また術中ステロイドや冷却水による物理的冷却などの神経保護も積極的に適応すべきである。今後は内視鏡手術の可能性や,遺伝子解析による劇的な治療戦略の変化も予想される。しかし最も重要なのはShared decision makingを十分に行い,患者の治療選択の機会を奪わないことである。