アジア市場経済学会年報
Online ISSN : 2424-2195
Print ISSN : 2185-1379
コロナ禍における企業経営とMCSに関する予備的考察:クライシスマネジメントとリスクマネジメントの関係を中心として
藤岡 資正
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 25 巻 p. 73-81

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抄録

2020年初頭より世界中へと拡大した新型コロナウィルス感染症(Covid-19)は,いまだに企業経営に大きな影響を及ぼしている。こうしたコロナ禍への対応には,突発的な危機への事後・即時的対応としてのクライシスマネジメントに加えて,事前・予備的対応としてのリスクマネジメントや新常態へ向けた事業機会の探求などを戦略的に統合していくことが求められる。つまり,一方では,引き続き収束の見込みが立たない混沌とした状況で組織の安定性を維持しつつ,他方では,刻一刻と変化する環境への即興的な対応や新常態への創発的な対応を通じて新たな事業機会を探求する企業家的な役割が重要となる。これら異なる動的圧力を調和させるには,状況に応じた複合的なMCS利用を可能とするダイナミック・ケイパビリティの構築が求められる。また,コロナ禍においては,組織内部における垂直的な対話に加えて,組織の境界を越えて,利害関係者との水平的対話を支援するような開かれたMCSの可能性を探求することが重要となる。

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© 2022 アジア市場経済学会
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