2022 年 25 巻 p. 83-89
本稿は,AECの発足がASEAN域内貿易に与える影響について,重力モデルに基づいた構造変化検定を用いて検証を試みた。本稿の主な結論は以下の通りである。ASEAN加盟国間のパネルデータを用いた上記の検証により,AEC発足以降においてASEANの域内貿易額が加盟国間の距離および加盟各国の名目GDPから影響を受けにくい構造に変化したことが示された。また,この構造変化は2015年を境に有意に生じたことが示され,AECが2015年12月に発足した点と整合的な結果が得られた。これらの結果により,AECの発足がASEAN加盟国の経済規模や加盟国間の距離に従来ほど依存せずにASEANの域内貿易を活性化させる要因となった点が示唆された。