2026 年 24 巻 p. 58-78
上場企業の財務指標を機械学習することで,今後1年間における自社株買い行動の予測可能性を検証した.近年,自社株買いは企業価値の向上策として注目されている.その背景には,東京証券取引所による資本効率の改善要請や上場基準の見直しがある.そこで本研究では,東京証券取引所上場企業を対象に,過去の自社株買い実績と当該時点の財務指標を説明変数とし,ロジスティック回帰やXGBoost等の機械学習モデルを適用した.その結果,自社株買い行動は0.7以上のAUC値で予測可能であり,その発生メカニズムは機械学習できるほど定型的な要素を多く含むと示唆される.
次に,この知見を株式ポートフォリオの銘柄選択に活用することで,資産運用における応用可能性を検証した.機械学習によって自社株買いの発生確率が高いと判断された銘柄群をロング,低いと判断された銘柄群をショートすることで分位ポートフォリオを構築したところ,比較的良好なパフォーマンスが得られ,伝統的なリスクファクターではモデル化できない追加的な収益機会を獲得できる可能性を確認した.