2013 年 39 巻 6 号 p. 325-330
本研究では,脱脂粉乳中のβ-Lgの作用により水溶化するグリアジンの特定を行い,β-Lgによる製パン性低下の要因について検討を行った。その結果,β-Lgは各グリアジンのうち最も親水性であるω-グリアジンと特異的に相互作用し,グリアジン会合体から同グリアジンが脱離し水溶化することを明らかにした。一方,加熱脱脂乳による製パン性の回復要因は、β-Lgがκ-CNと加熱複合体を形成することで,κ-CNの各グリアジンとの強い親和性によりω-グリアジンへの特異性が打ち消され,ω-グリアジンの脱離が抑制されるためと推察した。さらに、ω-グリアジンを脱離させたグリアジンを小麦粉生地に添加すると,生地形成が不良となり,膨らまない硬いパンになったことから,脱脂粉乳の製パン性低下は,β-Lgの作用によりグリアジン会合体からω-グリアジンが脱離することで惹起されることを明らかにした。