日本食品保蔵科学会誌
Online ISSN : 2186-1277
Print ISSN : 1344-1213
ISSN-L : 1344-1213
品種比較に基づいた水ナス果実の品質並びに加工特性
橘田 浩二松島 さゆり下川 陽大執行 正義板村 裕之山内 直樹
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 43 巻 1 号 p. 9-15

詳細
抄録

 ナスは年間消費量が高い野菜のひとつであり,これまで日本国内の気候に適応して,多くの品種が栽培されてきた。大阪府泉州地域では‘水ナス’が栽培されており,加工に適した品種として漬物製造に用いられている。しかしながら,その品質特性に関する詳細な研究は行われていないことから,本研究では,他品種と比較することで水ナスの品質特性を調査した。水ナスは,他品種に比べ比重は有意に高く,水分含量が最も高かった。果皮のポリフェノール含量はくろわしが最も高く,水ナスは低含量であった。アントシアニン含量は水ナス,鳥飼よりも千両2号,筑陽,くろわしで高含量を示した。また,アントシアニンの同定を行い,水ナス,鳥飼,筑陽,千両2号ではナスニンが含まれ,一方,くろわしではデルフィニジン-3-ルチノシドが含まれていた。すべての品種の果皮にはクロロフィルが含まれており,その含量は千両2号が最も高く,水ナスは7品種中3番目に高かった。次に,夏と秋に収穫した果実を用い,季節の相違による成分への影響を調査したところ,果皮のポリフェノール含量が夏収穫で有意に低いことを除いて季節間差はほとんどみられなかった。さらに,切断加工に伴う褐変の発生程度は水ナスが最も低かった。これはポリフェノール含量とPPO活性とが低いことに因っているものと推察された。以上の結果より,水ナスは果肉が緻密で,切断による褐変も生じにくいという品質特性を示し,漬物等への加工に適した品種であると考えられた。

著者関連情報
© 2017 一般社団法人日本食品保蔵科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top