2022 年 48 巻 4 号 p. 181-188
これまで高温加熱乳のチーズカード形成不良については液体の乳を加熱した際の挙動について議論されており,脱脂粉乳自体のチーズカード形成性およびタンパク質加熱変性について検討された例はほとんどない。本研究では加熱変性度の異なる脱脂粉乳を用いて,レンネット作用時のゲル化挙動および高温加熱乳においてチーズカード形成不良を引き起こす要因であるとされるカゼインミセルからのκ-カゼイン解離について検討した。脱脂粉乳のチーズカード形成性は動的光散乱法を用いてレンネット反応中のカゼインミセルの凝集を観察することで評価した。カゼインミセルからのκ-カゼイン解離の程度はHPLCを用いてκ-カゼインの定量を行うことで評価した。その結果,加熱変性度の高い脱脂粉乳ほどカゼインミセルからのκ-カゼイン解離量が増加し,それに伴いカゼインミセルの凝集が遅延していることが明らかとなった。これはκ-カゼインがカゼインミセルから解離することでレンネット反応後にカゼインミセルに形成されるパラ-κ-カゼイン量が減少し,それによって凝乳が生じなくなるという高温加熱乳と同様の現象であると考えられた。したがって,脱脂粉乳自体のチーズカード形成性はκ-カゼイン解離の程度がその指標となる可能性があり,脱脂粉乳をチーズ製造に用いる際にはカゼインミセルからのκ-カゼイン解離が生じていない脱脂粉乳を用いることが重要であると推察された。