食品と低温
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キノコ類の生理化学的特性と品質保持に関する研究
(第6報) シイタケの生育貯蔵に伴う遊離アミノ酸, ヌクレオチッド, 核酸含量および核酸分解系酵素, プロテアーゼ活性の変化
南出 隆久岩田 隆
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1985 年 11 巻 1 号 p. 5-10

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抄録

前報で比較的品質のよいことが明らかとなった1月収穫のシイタケ (徳島4号) を用い, シイタケの生育ならびに収穫後の貯蔵温度が遊離アミノ酸, ヌクレオチッドおよび核酸含量の変化に及ぼす影響を調べた。また, 核酸分解系酵素ならびにプロテアーゼ活性についても検討した。
(1) シイタケを6段階の熟度に分け, 生育に伴う子実体重, 並びに菌傘・菌柄の生長を調べた。ホダ木に子実体が形成された後, 約10日で成熟したが, その生育はS字状曲線を示した。また, 既報の夏期栽培のものと異なり, 菌柄の伸長よりも菌傘の生長が顕著であった。収穫適期 (stage 3, 4) は, 子実体形成後約1週間で, 1個当りの子実体重は10-209程度であった。ヒダからの胞子飛散は, 約1週間過ぎの子実体 (stage4, 5) で生じ, stage 6ではヒゲの一部に褐変が現われ, 菌傘は開ききっていた.
(2) 水分含量は, 大体88%から92%であり, 生育に伴いやや増加する傾向があった.RNA含量は, stage 1の生育初期のもので多く, 生育が進むにつれて減少したが, stage 3からstage 5で急減した。DNAは, stage2で最も多く, その後は, 生育に伴い減少した。ヌクレオチッド含量も生育に伴い減少することがわかった。
(3) シイタケの遊離アミノ酸組成の主なものは, グルタミン酸, アスパラギン酸, アルギニン, オルニチン, バリンであり, 生育に伴いアスパラギン酸を除く, 他のアミノ酸は減少傾向にあった。
(4) Cstage 3のシイタケを用い, 1℃および15℃貯蔵した時の菌傘における可溶性窒素化合物, 核酸, ヌクレオチッド含量について調べた。15℃貯蔵したものでは, 可溶性窒素化合物とヌクレオチッド含量の顕著な増加がみられた。また, RNA含量は, 貯蔵初期に増加し, 貯蔵5日まで高い値を保ったが, その後急減した。1℃貯蔵のものでは, これら成分に著しい変化はみられなかった。シイタケを菌柄, 菌傘, ヒダの三部位に分け, RNA, DNA含量の貯蔵に伴う変化を調べた。部位により貯蔵中の含量変化は異なり, RNA, DNA含量ともヒダで最も多いが, 貯蔵初期に急減することがわかった。
(5) RN ase, PD ase, PM ase およびプロテアーゼ活性の貯蔵に伴う変化を調べたところ, 1℃, 15℃両温度区ともRN ase活性の増大が認められた.しかし, 他の酵素活性は, 貯蔵に伴い低下した。

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