食品と低温
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Gluten代替タン白質の検索に関する研究
(第8報) 改質大豆7Sグロブリンの製パン性について
山本 淳西岡 ゆかり高田 千鶴子
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1986 年 12 巻 3 号 p. 93-97

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抄録

以上の結果を要約すると,
(1) エピクロルヒドリンで巨大分子化を行った改質大豆7Sグロブリンは, 加塩擂潰ゲル添加ドウの凍結保蔵によって明らかに製パン性が向上し, 改質前7Sグロブリンとは逆の製パン挙動を示した。
(2) 大豆7Sグロブリンと11Sグロブリンの混合比を変え, また, 0.1%卵黄レシチン添加の有無について行った製パン試験で, 両グロブリンそれぞれ単独で焼成した時の焼成容量を上廻ることはできなかった。
(3) エピクロルヒドリン改質7Sグロブリンと, 11Sグロブリンを同様に混合比を変え, 0.1%の卵黄レシチンを添加して焼成したものは, いずれも優れた製パン性を示し, 焼成パンの中落ち現象も全く認められなかった。
(4) 大豆タン白質に優れた製パン機能を付与するためには, その主要構成要素の0つである7Sグロブリンを食品として適合した方法で改質することが不可欠な要素となることが強く示唆された。
(5) 大豆11グロブリン, 7Sグロブリン, 改質7Sグロブリンの製パン挙動に対応する分子形状の変化を検討する目的で, 同一条件下で行ったトリプシン分解生成物のFormol滴定値を比較した結果, 7S, 11S両グロブリンの凍結変性に伴う分子形状の変化については明確な知見が得られたが, エピクロルヒドリン改質前後の7Sグロブリンが, 卵黄レシチンの添加によって起す製パン性の変化を示唆する結果は得られなかった。
以上の研究結果の概要は, 昭和60年5月本会10周年記念講演会, 同年9月の本会関西講演会で講演発表した。
研究を行うに当り, 協和醗酵工業 (株) から物心両面の援助を受けた。快く試料を分与下さった不二製油 (株), 実験に協力頂いた大西寿実, 永井園子, 野上雅代, 脇田七美の諸氏に厚く感謝の意を表する。

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