食品と低温
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Gluten代替タン白質の検索に関する研究
(第7報) 大豆7Sグロブリンの製パン性の改良について
山本 淳西岡 ゆかり高田 千鶴子
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1986 年 12 巻 3 号 p. 87-92

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抄録

以上の結果を要約すると,
(1) 米粉80%, 小麦グルテン10%, 分別大豆グロブリン10%より成る発〓パンを焼成した結果, 分子量, サブユニット構成を全く異にする大豆タン白質の7S, 11S両グロブリンは, 文字通り正反対の製パン挙動を示した。
(2) 7Sグロブリン添加焼成パンでは, 発〓の過程まではいずれも良好なスポンジドウを形成したが, 焼成の段階で顕著な中落ち現象を示した。このことは, 7Sグロブリンの形成するスポンジネットの膜強度が不足することに原因するものと推定した。
(3) 3個のサブユニットの分子間力だけで形成される7Sグロブリンでは, 膜強度の保持に必要な分子サイズに欠陥があると推定し, エピクロルヒドリンによる巨大分子化の改質を試みた。
(4) SDS-PAGEで調べて, 巨大分子化をしたことを確めたエピクロルヒドリン改質7Sグロブリンについて製パン挙動を検討した結果, 少量の卵黄レシチンの添加によって明らかに製パン性が向上した。
(5) 11Sグロブリンと正反対の製パン挙動を示した7Sグロブリンが, エピクロルヒドリン改質によって始めて11Sグロブリンと同一の製パン挙動を示したことは, 優れた製パン素材として, 大豆タン白質に新しい用途を開く可能性を強く示唆するものと評価した。
本研究の概要は昭和60年8月, 日本農芸化学会大会で発表した。
研究を行うに際して, 物心両面にわたって御援助頂いた協和〓酵工業 (株), 快く実験材料を分与下さった不二製油 (株), また, 実験に協力頂いた大西寿実, 永井園子, 野上雅代, 脇田七美の諸氏に厚く感謝の意を表する。

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© 日本食品保蔵科学会/学術著作権協会
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