食品と低温
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果汁の濃縮における凍結濃縮と逆浸透法の組合わせプロセス
福谷 敬三佐野 和男
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1983 年 9 巻 3-4 号 p. 97-104

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抄録

果汁の凍結濃縮に際し, 分離される氷結晶に含まれる果汁成分を逆浸透法で回収, 濃縮する, 凍結濃縮と逆浸透法の組合せによる温州ミカン果汁の濃縮法を検討した。
(1) 各糖濃度の氷結点および融解点を求めた。果汁を撹拌する方法で求めた氷結点, 植氷する方法で求めた氷結点および融解点は, ほぼ同じ温度であった。
(2) 凍結濃縮試験では, 供給果汁の糖濃度が高くなるに伴い氷結晶の除去率が低下し, ほぼ43°Bxが濃縮の上限であった。また, 供給果汁の濃度が30°Bxより高くなると, 分離された氷結晶に含まれる果汁成分の濃度が急増した。
(3) 果汁成分の糖濃度が, 1, 2.5, 5°Bxの供給液を30 日本コールドチェーン研究会誌「食品と低温」VOL.9 No.3, 4 1983 (104) 用いて, 逆浸透法による濃縮試験を行った。糖濃度のより低いものが透過係数が大であった。供給液に果汁に由来する懸濁物質が含まれている場合は, 清澄果汁に比べ透過流束の低下がみられた。膜透過液のCODは, 35-45ppmであった。
(4) 原果汁と組合わせプロセスにより得られた凍結濃縮果汁の芳香成分のガスクロマトグラムは, 定性的にはほぼ同じピークパターンを示した。真空蒸発法により得られた芳香回収液のガスクロマトグラムは, 多くの芳香物質のピークを示した。
(5) 原果汁と組合わせプロセスにより得られた凍結濃縮果汁, および真空蒸発法により得られた果汁の, 品質評価を官能検査により求めた。逆浸透法により回収した果汁の混合された凍結濃縮果汁の新鮮味の得点は, 原果汁に比べ, 極くわずかに低い値を示したが, 香味の非常に優れたものであった。

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