食品と低温
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冷凍実エンドウの硬化に及ぼすでん粉, ペクチン物質及びペクチン結合Mg, Ca含量の影響
樋口 寿南出 隆久
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1983 年 9 巻 3-4 号 p. 90-96

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抄録

実エンドウについて, 成熟, 貯蔵および冷凍に伴う硬化現象について調べた。冷凍品にっいては熱湯および食塩添加熱湯によるブランチングの影響を検討した。
1. 実エンドウの硬度は, 子葉では成熟に伴い増加したが, 種皮ではほとんど変らなかった。
2. 1℃および20℃貯蔵における実エンドウの重量変化は, 貯蔵温度による差はみられなかった。硬度は20℃では急速に増大した。1℃では種皮ではほぼ20℃と同様に硬化したが, 子葉および全体の硬化は顕著に抑制された。
3. 冷凍貯蔵品については, 子葉は両ブランチング処理により, 種皮は食塩添加ブランチングにより直ちに軟化した。また冷凍貯蔵中の経時的変化は, 種皮では無処理のものは貯蔵1週間で著しく硬化したがブランチング処理したものでは貯蔵中の硬度変化はみられなかった。
子葉では, 無処理のものは冷凍貯蔵中に著しく硬化したがブランチング処理したものは貯蔵1週間で硬度が急減した。全体としては, ブランチング処理により直ちに軟らかくなり, 食塩添加によりさらに軟らかくなった。冷凍貯蔵中の変化では, 無処理のものは30日貯蔵まで急激に硬化したが, 熱湯および食塩水のブランチング処理のものでは経時的変化はみられなかった。
4. 子葉のでん粉含量は熱湯ブランチング処理により減少したが冷凍貯蔵中に回復した。しかし食塩添加ブランチングしたものは, 直後は変化なく, 冷凍貯蔵中に減少する傾向がみられた。
5. ペクチンについては, 子葉では両ブランチング処理の影響はほとんどみられず, 種皮ではブランチングにより水溶性ペクチン (W-S) がわずかに高くなった。冷凍貯蔵中の経時的変化は, いずれの場合も一定傾向は認められなかった。
6. ペクチン結合Caは, 種皮ではW-S, ヘキサメタリン酸可溶性 (P-S), 塩酸可溶性 (H-S) 画分にほぼ同量, ペクチン結合MgはP-Sに非常に多く, H-Sに少なかった。子葉ではP-SのCaが非常に少なく, MgはH-Sに特に少なかった。
7. 無処理と食塩水でブランチングしたもののCa/Mg比にはほとんど差がなかった。しかし, 子葉のH-SにおけるCa/Mg比は他の画分に比べ値が高く, しかも冷凍貯蔵中に増加した。

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