2003 年 29 巻 3 号 p. 147-152
フィリピンではバシ (甘薦酒) の発酵の際に樹皮類が添加されることから, 発酵過程における樹皮類添加の微生物の生育ならびにバシ成分への影響について検討した。酵母の生育に対しては樹皮類添加の影響はほとんどみられず, 発酵後のアルコール生成量に影響はみられなかった。しかし, 乳酸菌は樹皮類の添加により完全に生育を抑制され, バシの発酵では樹皮類の添加によって酸敗の原因となる乳酸菌の生育が抑えられることが確認された。また, 樹皮類を添加することによりそれらのポリフェノール成分が溶出して渋味を呈し, 原料糖の甘味が緩和されて飲みやすい味となったことから, バシの製造では渋味の付与も樹皮類添加の意義の一つであると考えられた。