日本食品保蔵科学会誌
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タンゴール'清見'果実のこはん症発生と包装設計のための蒸散特性
疋田 慶夫テチャヴィセス ナッタコーン河野 俊夫
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2006 年 32 巻 5 号 p. 201-207

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抄録
清見'果実の貯蔵中におけるこはん症は低湿度条件による水分損失が主要な要因とされ, こはん症を防止するための適切な包装および貯蔵条件の確立が強く要望されている。本研究では, 適切な包装設計のための指針と, 設計に必要な'清見'果実の蒸散特性を明らかにすることを目的に, 包装状態での貯蔵試験と室内放置試験および果実の質量と表面積の関係, 水蒸気圧差と蒸散速度の関係, 収穫後における蒸散速度の変化などの測定を行った。
(1) 貯蔵試験では, 包装による通気性の小さい試験区ほど水分損失が抑制され, こはん症の発生も抑制された。また, 水分損失速度の視点より, 損失速度をできるだけ抑制することが包装設計における主要な指針になるものと考えられた。
(2) 室内放置試験では, こはん症の発生には個体差がみられたが, 水分損失5-6%の範囲に発生のピークが認められた。これより, 流通中の水分損失を約2%と想定し, 貯蔵期間中の水分損失3%が包装設計における目安になるものと考察した。
(3) 果実の質量と表面積の関係を示す良好な実験式が得られ, これより単位表面積当たりの蒸散速度を求めた。
(4) 水蒸気圧差と蒸散速度の関係を示す良好な実験式 (蒸散モデル) が得られ, 水蒸気圧差0.96kPa以下の範囲内で, 水蒸気圧差から蒸散速度を推定することが可能になった。
(5) 収穫後の水分損失に伴い蒸散速度はわずかに減少する傾向を示し, 1%の水分損失による蒸散速度の低下は1.5%と推定された。
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