抄録
糖鎖の構造には多様性があるが, その理由はいまだ明らかにされていない. このような多様な構造の糖鎖の機能を調べるためには, 非還元末端の糖残基が欠如した様々な構造の糖鎖を単一化合物として系統的に合成することが必要である. しかし, 糖鎖のなかでも高分子量のN-結合型糖鎖を数週間以内に数十mg合成する方法は確立されていない. そこで, 鶏卵からグラムスケールで得られる複合型2分岐糖鎖を原料に, 化学法と酵素法を組み合わせた方法で, 35種類以上を単一化合物として数十~数百mgのスケールで合成することに成功した. この研究の特徴は, 2分岐型糖鎖の非還元末端から, 一方のシアル酸のみを酸加水分解により除去しモノシアリル糖鎖を得, 続いてシアル酸が除去された方の分岐鎖に対し, 糖加水分解酵素を順次作用させ, 糖鎖の構造を誘導化するものである. しかし, シアル酸を加水分解すると, 2種類のモノシアロ糖鎖およびアシアロ糖鎖が混合物として得られ, 分析スケール (pmolスケール) では分離できても, 数十~数百mgスケールでは分離することは困難であった. そこで, 糖鎖に位置特異的に保護基 (Fmoc基, ベンジル基等) を導入して, 糖鎖の脂溶性を高めHPLCに用いる逆相カラムとの相互作用を向上させて, 有機合成に利用できる量の糖鎖の分離を可能にした. そして, 単離された純粋なモノシアロ糖鎖を原料に順次糖加水分解酵素を作用させて糖残基を一つずつ除去し, 様々な構造の糖鎖を得ることに成功した. この方法を用いると1-2週間程度で7-8残基からなる多様な構造の糖鎖が得られた.