Journal of Applied Glycoscience
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Penicillium chrysogenumの生産する低温適応性エンドアラビナナーゼの遺伝子解析
阪本 龍司居原 秀芝野 麻子永広 久雄川崎 東彦
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2005 年 52 巻 4 号 p. 369-372

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抄録
Penicillium chrysogenum 31B株は培養上澄中に少なくとも4種のアラビナン分解酵素を分泌生産する. その中の一つであるエンドアラビナナーゼ (Abnc) は反応最適温度が30-40℃であり, 40℃でも不安定な低温適応性酵素である. 本研究ではAbncをコードする遺伝子 (abnc) をクローン化し, その塩基配列を決定した. また, abncを大腸菌で発現させ, その産物の酵素学的性質を検討した. 本遺伝子の塩基配列を決定した結果, Abncは320アミノ酸残基から構成されるタンパク質であることが推定された. 現在までにカビ由来のエンドアラビナナーゼとしては, Aspergillus nigerおよびA. aculeatus由来の2種の中温性酵素の遺伝子の塩基配列が決定されているが, Abncはこれらのタンパク質とそれぞれ66%および65%と高い同一性を示した. Aspergillus由来の両酵素ともに糖加水分解酵素ファミリー43に分類されていることから, Abncも同ファミリーに属することが判明した. また, このファミリーで推定されている触媒残基は本酵素にも保存されており, Asp34は塩基触媒, Glu199は酸触媒として働くことが予想された. 大腸菌で発現させた組換型Abncの温度特性は野生型酵素と同様の性質を示したことから, 目的とする遺伝子を単離できたものと考えられる. 組換型Abncを用いて, 重合度3から7までのアラビノオリゴ糖に対する分解活性を測定した結果, 本酵素は重合度6以上のオリゴ糖に対して高活性を示した. また, アラビノトリオースに対しては本実験条件下では分解活性を有しなかった.
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© 2005 by The Japanese Society of Applied Glycoscience
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